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リビングのソファーの上、俺の膝の上で彼女は眠っていた。赤ワインはまだ半分ほど残っている。
俺はグラスに残ったワインを飲み干し、彼女の寝顔を眺めた。
安心しきっている。
殺るなら、今だ。
俺は彼女の首にそっと手を置いた。ここで力を込めれば、簡単に彼女の息の根を止められる。
指先から伝わる頸動脈の拍動を感じながら、ふと思う。
まだ、1年だったのか。
もう十分に期は熟したと思っていたのに。
どれくらいそうしていただろう?
シャンパンを飲みながら、嬉しそうに笑顔で俺に語りかける由真の姿が、脳裏に焼きついて離れなかった。
しばらく考えた末、俺は由真の首からゆっくりと手を放し、彼女を抱えて寝室へと向かった。そっとベッドに下ろして、上から布団をかけてやった。
そして、由真のあどけない寝顔を見つめた。
自分の中に湧き上がる鬼としての衝動とは別の感情にくすぐったさを感じながら、幸せそうに眠る由真の顔を見つめ続けた。
まだ生かしておいてやるか。
ちくしょう。腹、減ったな。
少しの苛立ちと胸の中に渦巻くもどかしさを抱えながら、リビングに置きっぱなしの食器を片付けるべく、俺は寝室を後にした。
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