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植物園 2 ◆ロッティ視点◆
「あーあ行っちゃった」
ため息をついたり、身を乗り出したり。
ずっとそわそわしていたエミリーが、とうとう木陰から飛び出してしまった。
ジリジリしてるのが背中からでも伝わってきてたものねえ。
エミリーってば、余程我慢ができなかったのね。
あんなに必死な顔で「ベンチで待ってて! 絶対!」なんて言われたら、余計に気になるでしょ。ほんっと隠し事が出来ないんだから。
それにしても、私が後ろから見ているのも気づかないくらい夢中になってたけど、あの場所に誰がいるのかしら?
周りを見渡し、誰もいないことを確認すると、さっきまでエミリーが隠れていた場所に移動した。そこからは植物園の入り口がよく見えた。
あら、エミリーが誰かと話をしてる……。
あの目立つ髪型、あれはブリジットね、それにイネスとエマだわ。
三人で何やって……ん? あともう一人いるわね。
誰かしら、顔が見えない……。
もう一度周りを確認して、木陰から思い切り背伸びをした。
重なるように立っているブリジット達の背中に邪魔されて、もう一人の顔はまったく見えない。
もう少しずれてくれれば、誰かわかるのに……。
あんなに必死だったエミリーには悪いけど、私もあの場所に行くしかないかしら……。
「やあ、シャルロッテ」
突然、誰も居なかったはずの背後から、大きな声が聞こえた。
それと同時に、強く肩を掴まれる。
あまりの力に振り返ろうとした時、肩越しに見えたその顔は、眉間に皺を寄せたジークフリードのものだった。
「ジークフリード……」
「こんなところでこそこそと何をやってるんだ?」
ジークフリードは私の体を軽く突き放すようにして手を離した。
肩を力いっぱい掴んでおいて、何なのこいつ?
人を苛立たせるようにしか話せない呪いにかかってるのかしら?
それに、制服なのにどうしてマント着てるのよ、目立ちたがりにも程があるわ。
「こそこそなんてしてないわ、あそこにエミリーがい……」
「なっ! シャルがいるではないか!」
聞いたくせに説明遮るって最低な男!
って、シャル? シャルってあの子よね?
ジークフリードの言葉を確かめようとすると、今度は正面から肩を掴まれ、思いきり体を揺さぶられた。
「貴様、シャルになにをしたんだ?」
あーもう、何なのよ。
痛いうえにマントがばさばさ鬱陶しいったらないわ!
「はぁ? どうして私が関係あるのよ? あんた自惚れんのもいい加減にしなさいよね!」
ジークフリードの腕を思い切り払いのける。掴まれた肩が痛む。
なんて凄い力なの、馬鹿王子。
しかも私を睨みつけて、シャルロッテの方を見てって、落ち着きがなさすぎる!
でも、あの場所にいるのがブリジット達とエミリー、そこにシャルロッテと考えると……私が企んだようにも思えなくはないわね。
ああーなんだか面倒なことになりそう。
「おお可哀想なシャル、今行くぞ!」
「え? 待って!」
「こんな状況で待つ馬鹿がいると思うか!」
ジークフリードはわざとらしく私にぶつかり、マントを翻しながら温室の方へ走り出した。
「君たちー! そこで何をしているんだーい?」
目の前を走っていくジークフリードの後ろ姿は、ひらひら靡くマントのせいか本当に馬鹿みたいに見えた。
植物園の入り口では、突然現れたジークフリードに、皆が動揺しているのが分かる。
ほら、エミリーがキョロキョロしているわ。
ブリジット達なんて後ずさりしてる。
この中に私が行くと、まるで悪役登場みたいね……。
無意識に大きなため息が出てしまう。
でも放っておくとエミリーに迷惑がかかってしまう、あの馬鹿を追いかけなきゃ。
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