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植物園 3
「あらブリジットよね? こんなところで何してるの?」
「あ、あらまあ、エミリー…いえちょっと、お話があって、集まってただけなの」
あきらかにブリジットは焦っていた。
冷静に答えてるつもりだろうけどいつもより早口だ、他の二人は目をそらしている。シャルは驚いたように顔を上げると、わたしと目が合った。美しいペリドットの瞳が潤んでいる。
「お話ですか……授業はどうするつもりだったんです? と言っても、もう始まってますね、早く行かないと皆さん減点になってしまいますよ」
「私は……」
「『私は……』? 続きはなんですか? 悪いけど話は全部聞こえていました」
怒りが抑えられないわたしに、ブリジットは下唇をギリッと噛んで、にらみつけるような視線を一瞬だけ向けた後、シャルを指さした。
「この女が生意気なのがいけないんです!」
「レディが『この女』なんて使っちゃいけません、それに彼女にはシャルロッテという素敵な名前があります」
「そんな名前で呼びたくない! シャルロッテ様が迷惑してるのよっ!」
縦ロールを揺らしながら、眉を吊り上げてシャルを指さし続けるブリジット。
女の子のこういう表情見てられないな……。
シャルは言われるがままで、また目を伏せて俯いている。長い睫毛に桜色の唇、この可憐さがブリジットを余計に苛立たせているんだろう。
「ロッティは一度もそんなこと言ってないわ」
「は? ちょっと仲が良いからってあなたに何がわかるのよエミリー! 婚約者に付きまとう女なんて迷惑に決まってるでしょ!」
「わかるわよ、ロッティはそんなこと言う子じゃないし、あなた達みたいに人がいない場所に呼び出すようなずるい真似もしない!!」
「なんですって!」
わたしの言葉に縦ロールが蛇のようにうねった……ように見えたくらい、ブリジットが怒っているのがわかった。顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけている。
「あなたのことも前から気に入らなかったのよ!」
「やめてください!」
今にも掴みかかりそうな勢いでわたしに向かってきたブリジットの前に、突然シャルが割って入った。
「もうやめてください、私が悪いんです、申し訳ございません……」
謝罪の言葉を言いながらシャルはブリジット達に深々と頭を下げる。
うわーやめてーーシャルが謝らなくていいのに、もう! 結局最悪なことになってる。
これ以上話すのは無理かもしれない、でもシャルにはロッティがそんな命令をする子じゃないと誤解を解きたい、どうすれば……。
想像もしていなかった展開に頭を抱えていると、ブリジットの取り巻きの一人が、入り口の方向を見て小さな声で呟いた。
「ジークフリード様……」
その言葉に、わたしを含めた4人が一斉に振り返る。
「君たちー! そこで何をしているんだーい?」
真っ白なマントをはためかせたジークフリード王子が、植え込みをバサバサと散らしながら、なんとも言えない笑顔で走ってきていた。
え、どういうこと? あれ? 後ろにいるのはロッティ?
走ってくる王子の後ろ姿を、腕を組んでムッとした表情のロッティが見つめている。そして、離れていてもわかるくらい大きなため息をついていた。
うわー強制イベントかーーーーー!
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