ギャンブルだ

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ギャンブルだ

 ブランコの鎖がギシギシッと(きし)んだ。  虫酸が走るほどイヤな音だ。    だが、こうなったらやるしかないだろう。  イチかバチか、ギャンブルだ。 「ッたァーー」  ブランコが(きし)むのも構わず反動をつけて一気にボクはブランコを飛び出した。  久しぶりに宙を飛ぶ感覚だ。  小学校以来だろうか。  しかし思ったよりも飛びそうだ。  上手く着地できれば、マリアよりも飛んだかもしれない。 「……!!」マリアも無言でボクを睨んだ。 「くゥッ!」  なんとか、バランスを取って着地した。  どうだ。  これならマリアよりも飛んだのか。 「フフゥン」  だがマリアは小悪魔みたいに微笑んでボクに駆け寄って『ポン』と胸元を軽く小突(こづ)いた。 「ワァーーッ!」  途端にボクは悲鳴を上げた。  かろうじて保っていたバランスを崩し後方へ倒れそうになった。  手で藻掻(もが)きながらも後ろへひっくり返った。 「イッテェ、何するんだよ」  思わず尻もちをついてしまった。   「フフゥン、残念ね。私の勝ちよ」  マリアはボクを見下ろしマウントを取ってきた。   「えェッ、ひどいよ。マリアが胸元を押さなければボクが勝ったのに。完全に反則じゃん」  ボクは不満を漏らした。  文句を言いながら尻についた土ホコリを払った。 「ハイ」  マリアはスッと手を差し伸べてくれた。 「え、ああァどうも」  ボクも彼女の手を握った。  しかしマリアは思いっきりボクを引っ張り上げた。 「ワァーーッ」  あまりも強引に引っ張るのでボクは勢いあまって彼女に抱きついてしまった。    ハグする格好だ。  柔らかな胸の膨らみを感じた。 「あ、悪い!」  すぐに離れようとしたが、マリアはギュッとしがみついて離れない。 「あのォ、マリア。ゴ、ゴメンなさい」  ボクはドキドキしてパニック寸前だ。  全身が戦慄(わなな)いてきそうだ。
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