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お腹空いちゃったから
「えェッマジで?」
どっちにしてもボクの弁当を早弁する気だろう。
「フフゥン、心配しないで。私だって鬼じゃないんだから。ちゃんと半分くらいは残してあげるわ。どう、嬉しいでしょ?」
いかにもマリアは恩着せがましい口ぶりだ。
どこかの首相の『恩着せメガネ』ばりに厚かましいにも程があるだろう。
「いやいや、元はボクの弁当だから別に嬉しくはないよ。半分残して貰っても、ハイよ」
だが仕方なくボクは持ってきた弁当を差し出した。
どうせこのまま無理やり食べられるくらいなら無駄な抵抗をしない方がマシだ。
「フフゥン、いただきマンゴー」
さっそくマリアは弁当のフタを開け、ワケのわからないことを言って早弁を始めた。
唐揚げの香ばしい匂いにボクの食指が動いた。
「ゴックン、頼むから少しは唐揚げを残しておいてくれよ」
思わずボクは生ツバを飲み込んだ。
ボクは鶏の唐揚げが一番の大好物だ。
特に母親の作った唐揚げは絶品だ。
売り物の唐揚げよりも遥かに美味しい。
「フフゥン、残念ね。オバさんの作った唐揚げには、私も目がないの」
「おいおい…、今月は小遣いも苦しくてパン代すらないんだぜ。お昼は残りの弁当しかないんだから。ちゃんとおかずも残しておいてよ」
こっちだってマリアに負けず劣らず食べ盛りだ。
「ふぅん、私も今月大ピンチだよ。ギガ食い過ぎで低速だもん。やんなっちゃうよォ」
弁当を食べながらマリアは嘆いた。
「ふぅん、だけどマリアはスマホのやり過ぎだろう。少しは控えれば?」
「やァよ。スマホがなかったら生きていけないじゃん。スマホ命なんだから!」
「はァ……」
まったくボクが忠告しても聞く耳を持たない。
「そうだ。いい考えがあるわ」
「ン、いい考えって、どんな?」
「ええェッとねえェ。お腹が空いちゃったから結婚しちゃおうか?」
小悪魔は、とんでもない提案をした。
「な、なんだってェ……。け、け、結婚?」
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