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結婚しちゃおうか?
「お腹空いちゃったから結婚しちゃおうか?」
小悪魔は、とんでもない提案をした。
「な、な、なんだってェ。け、け、結婚?」
ボクは驚いてひっくり返りそうになった。
いったい何を考えているんだろう。
話しが飛躍し過ぎて意味不明だ。
「フフゥン、美味しいィ!」
マリアはまるで何ごともなかったみたいだ。
美味しそうに唐揚げを口にした。ボクに見せつけるようだ。
「あのねェ…。いくら何でもぶっ飛びすぎだろう。お腹が空いたからって、どうして結婚に結びつくんだよ」
話しにならない。
「違うのよ。おバカさんね」
「いやいや、なんでボクがおバカさんなんだよ」
どっちかと言えば、マリアの方がおバカさんだろう。
「ほらァ、知らないでしょ。マコは!」
「え、なにを?」
こいつはいつも説明不足だ。
「ほらァ今度、横須賀市へ移住する新婚さんに六十万円の結婚助成金が出るのよ」
「はァ、何それ。新婚さんに結婚助成金が六十万円も出るの?」
どんな少子化対策なのだろう。
悪いが勉強不足で知らなかった。
「そうそう、嘘だと思うなら『横須賀市。新婚さん、助成金』で検索してみなさいよ」
「なッ、マジかァ?」
そう勧められても半信半疑だ。取り敢えず言われた通りにスマホを出した。
まだ疑ったままだ。
「横須賀市、新婚、助成金……」
躊躇いがちにGo○gleで音声検索するとすぐにインフォメーションが流れた。
「あッ!」
確かに横須賀市では結婚新生活支援事業の一環として、新婚のカップルに引っ越しの費用や新居の家賃を最大六十万円支援すると告知されていた。同性婚のカップルも同様だ。
「ふぅん、横須賀へ移住かァ?」
横浜のすぐ隣りだ。
京浜急行で十分もかからないだろう。八景島シーパラダイスのある金沢八景の向こうはすぐ横須賀市だ。
「横須賀は過疎化が進んでいたのよ」
「えェッ、マジか?」
横須賀市と言えばアメリカ海軍の常駐するベース基地があり、防衛大学もあるので過疎化が進んでいるようには思えない。
だが実際には、1,990年の四十三万人をピークに毎年、三千人近く流出していた。実に十年間で二万人以上も減少していた。
全国で人口流出ナンバーワンを記録したのも記憶に新しい。
「そのために新婚さんに移住して貰おうって言う政策なのよ」
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