マリア

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マリア

「なによ。もう煮え切らないヤツねえェ…。ハイ、これ返すわ」  マリアはふて腐れたように弁当を突き返してきた。 「いやいやァ返すって言ったって、もう半分以上食べたクセに」  一番好きな唐揚げもほとんど無くなっていた。 「じゃァ」  マリアは怒って自分のクラスへ帰ってしまった。 「おいおい、ッたくゥ……」  取り付く島もない。  つつがなく四時間目も終わり、昼食の時間だ。  ボクはカバンから弁当を取り出した。  かなり軽く感じるが仕方がないだろう。フタを開けると思った以上におかずが少ない。 「ううゥン、唐揚げはひとつも無いじゃん」  ボクは眉をひそめて嘆いた。  ボクの弁当は遠慮なくほとんどマリアに食べつくされていた。  それでもお腹が減ったので残りを食べようとすると、不意に声をかけられた。 「よォマコ。ほらァ一緒に食べようぜ」  マリアがニッコリ微笑んでやっていた。  今度はちゃんと学生服姿だ。  弁当をふたつ手に持っていた。 「えェ……?」  まだ弁当をふたつも食べる気なのか。 「フフッ、ほらァ可哀想だから、マコの分も作ってきてやったぜ」  しかし弁当のひとつをボクの前へ寄越した。 「マジで?」  ボクも嬉しくて顔がほころんだ。 「ちゃんとオバさんに唐揚げの作り方も習ったんだよ」  マリアは自慢げに胸を張った。 「え、お母さんに習ったのォ?」  ボクの母親は実の息子のボクよりもマリアと仲が良い。 「そ、召し上がれ」 「どうも、じゃァ遠慮なく。ああァン」  唐揚げを食べたが、母親直伝なので美味しい。
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