第1章 絶交中の幼馴染

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 レジから客が途絶えた途端。バイト仲間の大学生のお姉さんがいそいそと寄ってきた。なぜか満面の笑顔。 「アイドルみたいな美形と、親しげに話していたよね⁉︎ 友達?」 「同じクラスの人です」 「同じクラス⁉︎ いいなー、羨ましいっ! 超楽しい学校生活じゃない。学校に行くのが楽しいでしょう? 私もあんなイケメンと机を並べてみたかった。青春ねぇ」  大学生のお姉さんの名前は、伊藤美月さん。わたしと四歳しか違わないのに、やけにしみじみとした口調で話すのがおかしい。  伊藤さんの目は、好奇心でキラキラと輝いている。 「付き合っているの?」 「違いますっ!」 「片想い……って感じじゃないよね。脈アリに見えたもん。付き合う一歩手前って感じ?」 「全然違います!!」 「ふ〜ん。そうなんだぁ」  伊藤さんは納得したようなことを言いながらも、口ぶりも表情も納得していないようだった。  含み笑いしながら、肩をわたしの肩にぶつけてきた。 「紙をもらっていたよね? お姉さんに見せなさい!」 「そういえば……」  制服のポケットから、四つ折りになっている紙を取り出す。伊藤さんに見られながら、ベージュ色のメモ紙を広げる。 『明後日、護摩神社で会いたいです。大切な話があります』  伊藤さんは、はしゃいだ声をあげた。 「きゃあーっ! 告白されるんじゃない? ついに、ゆらりちゃんに彼氏ができる。しかも超美形! 羨ましいーっ!!」 「違いますってば!!」  懸命に否定しながらも、頬が熱くなるのを止められない。  わたしに手紙を渡すために、水都が店に来てくれた。そのことに、頬が緩んでしまう。  流しにある鏡を覗くと、思いっきり顔がにやけている。バイトが終わるまであと一時間もあるのに、これはマズイ。  わたしは頬をピシャピシャと叩くと、表情を引き締めた。  けれど、水都の私服姿が頭から離れていかない。ジーンズと薄手のニット。V字のニットから覗いていた鎖骨が綺麗だった。 「……って、わたしのバカー! キモすぎる!!」 「どうした?」  挙動不審な言動を見かねたのだろう。伊藤美月さんが声をかけてきた。けれど店内で話すわけにはいかない。  なんでもないです、と誤魔化すことはできる。けれど、彼氏のいる伊藤さんに相談してみたい。  わたしは悩みがあるのだと伝え、相談に乗ってほしいと頼んだ。 「わー、嬉しい! ゆらりちゃんに頼られた。九時まで待っていられる?」 「はい」  わたしのバイト上がりは八時。伊藤さんは九時。  わたしは先にバイトを終えると、家に電話して遅くなることを伝えた。廃棄処分になったお弁当を事務所で食べる。  九時になり、バイトを終えた伊藤さんとコンビニの裏へと向かった。縁石に座り、伊藤さんが買ってくれたホットココアを飲む。  九月下旬。夏の熱気が薄まり、冷ややかさが増していく。温かい飲み物を両手で包むと、指先が意外と冷えていることに気づく。  
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