第1章 絶交中の幼馴染

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 翌朝。水都が教室に現れると、わたしはとっさに目を逸らした。 (露骨すぎたかな……。だって、昨日のコメント、傷ついたんだもん……)  水都は、わたしが【ゆり】であることを知らない。水都は正体の知らない人に向けて、デートをするのは無理なんじゃないでしょうか。と発信したにすぎない。  だけどわたしは傷ついたし、水都を好きだと自覚したその日に否定されたのが痛かった。取り柄のない貧乏地味女子が不相応の相手に恋をしても叶うわけないと、神様から諫められたように思ってしまった。  水都はコンビニに来て、わたしの家族分のブリトーを買ってくれた。「食べた感想を言い合おうよ」と、会話のきっかけを作ってくれた。  それなのにわたしは、露骨に避けている。水都と目を合わせることをせず、近寄ることもしない。水都を見ないから、彼がどんな顔をしているのかわからない。  わたしの心を表しているかのように、空を灰色の雲が覆い、四時間目から雨が降りだした。  お昼休み。魅音はわたしのおむすびを取りあげた。 「きゃあーっ! わたしのおむすびを返してよー!!」 「うちに報告すること、あるよね?」 「ないです」 「いや、あるね。うちの目は誤魔化せん。あんたと水都くんの様子、変だもん。水都くん、なにか言いたそうな顔でゆらりのことを見ていた。なんかあった?」 「別に、なにも……」 「いただきまーす!」  おむすびを包んでいるラップを開けようとする魅音。代わりに、魅音のお弁当を奪いたいけれど、魅音は自分のお弁当を太ももに挟んでいる。鉄壁のガードに歯ぎしりをするしかない。 「わかった、話すから!! 魅音のお弁当をちょうだい!」 「交渉成立。今日は自分で作りましたー」  魅音のお弁当を開けてびっくりする。白いご飯とたまごふりかけ。おかずは、冷凍食品っぽいコロッケが二つ。 「え? これだけ? お母さん、具合が悪いの?」 「ううん。友達と温泉旅行に行っている。どう? 魅音特製手抜き弁当は?」 「手抜きすぎて、泣けてくる」  わたしは、魅音特製手抜き弁当を。魅音は、鮭おむすびと昆布ちりめんおむすびを食べる。  教室なので、周囲に聞かれないように、声量を下げて話す。 「昨日、水都がバイト先に来たんだけど……」  わたしは昨日あったことを洗いざらい話した。  
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