花ちゃん聞いて

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「意識戻ったそうよ!」 「本当ですか!」  翌日、新人の意識が戻った。仕事が終わると梨香と水野はお見舞いに行った。今日は係長も一緒だった。 「心配してくれてありがとうございます。退院してからも姪っ子をよろしくお願いします」  係長が梨香たちに頭を下げた。姪っ子だと聞いて梨香は冷や汗が出てきた。それであんなに親しげにしていたのか。勘違いで死なせてしまうところだった。  それから穏やかな日々が流れた。新しく入ったパートとも仲良くなった。これからは心を入れ替えて人の良いところを見よう。梨香は心に誓った。 「う……ん……」  まるで火で焼かれているように熱かった。息苦しさに梨香は目を覚ました。 「え……!?」  枕元に花ちゃんがいた。立っていた。髪も顔も焼けただれていた。 「花ちゃん……」  焼け落ちた顔から眼球が飛び出していた。その眼球がぐるりと回り、梨香を見据えた。 (何で私を消したの?)  花ちゃんが頭の中に語りかけてきた。切なそうに。 (何で私を消したの?) 「ち、違うの。もう誰にも不幸になって欲しくなかったの」 (何で私を……消したの……  寂しいよ……梨香ちゃんも……)  花ちゃんの目から涙が溢れ出した。梨香は花ちゃんを抱きしめようと手を伸ばした。しかしそこには何もなかった。ただ、焦げ臭い匂いだけが残っていた。   〈終〉  
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