花ちゃん聞いて

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 新入社員が入って来た。まだ大学を出たばかりで仕事なんて何も分からない。口のきき方も社会人としてのマナーも知らない。 「聞いてよ花ちゃん! 新人だからって係長にベッタリくっついて仕事教えてもらってるのよ。私や水野さんに聞けばいいのに。それにコピーやお茶くみを私にさせるのよ。新人の仕事なのに! そりゃ私は高卒だけど、職場じゃ私の方が先輩だよ。生意気なヤツ!」  とにかく腹が立った。若い、可愛い、英語やパソコンが出来る。係長に指導してもらっている。先輩社員を見下している。  そんなヤツに係長がなびくわけがない。そう思いながらも不満はつのるばかりだった。 「花ちゃん、あんなヤツいなくなればいいのに。せっかく職場がいい雰囲気になったのにぶち壊しよ。あんなヤツ、消えちゃえ……!」  昼食はいつも水野と一緒に社員食堂で食べている。水野は人の悪口を言うでもなく、噂話をするでもない。子どもがこんな事をしたとか、今日の夕飯は何にしようかと楽しげに話をする。梨香は自分が殺伐とした職場にいる事さえ忘れられた。人生の先輩として尊敬している。 「私も一緒にいいですかぁ?」  新人がランチのお盆を持って2人が食べているテーブルに座った。身構える梨香とは正反対に、水野は「どうぞ」と笑顔で答えた。 「仕事は慣れた?」 「少しは」  親しげに話をする2人を、梨香は無言で眺めていた。 「係長だけじゃなくて、水野さんまで手に入れようっていうの? 許せない……許せない! あんなヤツ、消えろ!」  梨香は花ちゃんの両手を強く握りしめながら呪いの言葉を吐いた。憎くて憎くてたまらない。自分から全てを取り上げようとする新人が目障りでたまらなかった。  次の日出社すると新人は休みだった。
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