12人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「意識戻ったそうよ!」
「本当ですか!」
翌日、新人の意識が戻った。仕事が終わると梨香と水野はお見舞いに行った。今日は係長も一緒だった。
「心配してくれてありがとうございます。退院してからも姪っ子をよろしくお願いします」
係長が梨香たちに頭を下げた。姪っ子だと聞いて梨香は冷や汗が出てきた。それであんなに親しげにしていたのか。勘違いで死なせてしまうところだった。
それから穏やかな日々が流れた。新しく入ったパートとも仲良くなった。これからは心を入れ替えて人の良いところを見よう。梨香は心に誓った。
「う……ん……」
まるで火で焼かれているように熱かった。息苦しさに梨香は目を覚ました。
「え……!?」
枕元に花ちゃんがいた。立っていた。髪も顔も焼けただれていた。
「花ちゃん……」
焼け落ちた顔から眼球が飛び出していた。その眼球がぐるりと回り、梨香を見据えた。
(何で私を消したの?)
花ちゃんが頭の中に語りかけてきた。切なそうに。
(何で私を消したの?)
「ち、違うの。もう誰にも不幸になって欲しくなかったの」
(何で私を……消したの……
寂しいよ……梨香ちゃんも……)
花ちゃんの目から涙が溢れ出した。梨香は花ちゃんを抱きしめようと手を伸ばした。しかしそこには何もなかった。ただ、焦げ臭い匂いだけが残っていた。
〈終〉
最初のコメントを投稿しよう!