アタシの大切なともだち

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 エリは家には帰らずに、近くの山へと向かった。  山は昼間でも鬱蒼としていて、決して子供だけで入ってはいけないと、きつく言い付けられている。でもエリは、自分は11歳になったのだし、もう小さな子供じゃないわと思っていた。  少しきつい山道を3分の2程登って行くと、途中、開けた場所に出る。そこには古びた神社があり、そこがエリの目的地だ。  今にも崩れ落ちそうな社の、数段ある(きざはし)を上り、鍵の壊れた扉を少しだけ開ける。そして、中に呼び掛けた。  「クロ、おいで 」  クロは恥ずかしがり屋だ。絶対にエリの前に姿を現さない。  カバンを開けると、中からナプキンに包まれたパンを取り出し、扉の前に置く。エリが給食をこっそりと残したものだった。   暫く待っていると、小さな黒い手がすうっと伸びて来てパンを持って行く。中から、「ちぃ 」と鳴き声がした。ありがとうと言われているみたいで嬉しくなる。  「あのね、クロ…… 」  いつもなら、ここで学校であった嫌なことをクロに聞いてもらう。だけど、この日はちょっと違った。  それは、エリが階の一番上に腰掛けた時だった。扉の隙間から、1匹の猫がするりと入り込んだのが目の端に映る。  あっと思った時、中からバタバタと激しい音がした。同時に、ギャンッと猫が鳴いたかと思うと、突然、クチャ、ボリッと、咀嚼する音が聞こえ始める。  猫を、食べてる?  あまりのことに、エリはその場から動けなくなる。だが、クロはピチャピチャと音を立てて食事を終えると、エリに向かって、「ニャアン 」とあまえた声で鳴いた。  鳴き声は違うけれど、これはクロの声だ。さっきの猫をエリが与えたと思っているのだと分かった。  ゾクリとある種の快感が、エリの脊髄を走る。  「そ、うだよね。パンなんかじゃ、クロには足りなかったよね 」  ナァ……っと、クロが可愛らしい声でまた鳴いた。
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