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それからエリは、給食を残すのをやめた。代わりに小動物を餌として与える様になった。
クラスで飼われている金魚を持っていったり、猫を捕まえたり、たまに、飼われている犬を黙って連れて行き、クロに食べさせたりした。
犬は大きい分、クロの気配を感じて抵抗されると大変だ。けれど、扉の前まで引っ張っていけば、クロの、熊みたいに大きくなった手が隙間から伸ばされ、中に引き摺って持っていく。直ぐに響く、生き物の断末魔。
犬を腹に収め、「ワンッ 」と力強く鳴くクロの成長をエリは誇らしく思う。
お父さんとお母さんは、アタシにはペットなんて育てられないって言って、飼うのを許してくれなかったけど、アタシにだってできるんだから。
大きくなっても、「キュウン」と甘えるクロ。きっと、こんなに大きくなったクロには、この量では足りないのだろう。
お腹を空かせているクロを、エリは可哀想だと思った。
◆◆◆◆◆
その日の帰り、またクロの所へ寄って行こうとするエリに、ユカが話し掛けてきた。
「ねぇ、エリ。いつシルヴィを見に来るの?」
「うーん、今日は無理 」
「そう言って、いつも来ないじゃない 」
ぷくっと可愛く膨らませる頬。そうすれば、誰もが言う事を聞くと思ってるんだろうか。
「ごめんね、クロが待ってるから 」
「クロって、エリの飼ってるペット? 」
「うん」
「そんなに可愛いの? 」
エリは、「すごく可愛いよ 」と頷いた。
すると、ユカが良い事を思い付いたという風に、パチンと両手を合わせる。
「じゃあ、シルヴィと一緒に遊ばせようよ 」
そんなの無理だと思いつつ、エリの頭に意地悪な考えが浮かんだ。ユカの自慢の犬なんて、クロに食べさせちゃえばいい。
「分かった、遊ぼう 」
了承したら、ユカが嬉しそうに、「エリとクロちゃんに、シルヴィを紹介するね 」と笑った。
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