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ユカとは、一度家に帰ってから、山道の入り口で待ち合わせをした。ユカの腕に抱かれている巻き毛の茶色い小さな仔犬は、耳に、ユカのワンピースとお揃いの薄桃色のリボンを付けていた。
「アレ、クロちゃんは? 」
キョロキョロとエリの周りを見ながら、ユカが聞いてくる。
「クロはここにはいないの。行こう、クロに会いに 」
山道を指差すと、ユカが眉を顰める。
「山に入るの?」
「うん 」
「パパとママに怒られるよ? 」
「そう、クロを飼ってるのは内緒なの。だからユカも黙っててね 」
二人だけの秘密。その言葉は、叱られる事より、ユカの好奇心を勝たせたらしい。エリが足を進めると、ユカは後ろから付いてきた。
二人で山道を登る。スニーカーで毎日の様に登っているエリには大した事が無かったけれど、ピカピカのおしゃれな靴を履いて来たユカはしんどそうだった。
初めは次々に質問してきていたが、段々と言葉少なになってくる。答えられる事もあまり無かったし、エリにとっては好都合だった。
シルヴィとかいうバカ犬は、キャンキャンと吠えて、暴れるばかりでユカのしんどさに拍車をかけているみたいだった。
面倒くさい犬、羨ましくも何ともない。エリは、懐いているクロの方が賢くてずっと可愛いと思った。
やっと神社に着いた時には、見るからにユカはヘトヘトになっていた。
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