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「ねぇ、今日うちへ来ない? 」
帰りの会の後、ユカが皆に声を掛けてきた。
「犬を飼い始めたの。ポメとトイプードルのミックス。すごく可愛いんだから 」
クラスの皆がわぁっと、感嘆の声をあげる。エリは『あぁ、また自慢か 』と思った。
ユカの家はお金持ちで、両親は娘に甘いらしく、ユカは望むものを全て与えられる。レースの沢山付いた可愛い服や靴、ブランドの小物。この間は大きなグランドピアノを買って貰ったから、ピアノを習い始めたって言っていたのに。
「ほら、わたし一人っ子だし、パパもママも仕事で忙しいから寂しくない様にって 」
今迄はそんなユカが羨ましくて仕方がなかった。だけど今は違う。
ユカに目もくれず帰る支度をするエリに、ユカが不思議そうに声を掛けてくる。
「エリは来ないの? 」
「うん、アタシはいいや 」
「シルヴィ、本当に可愛いのよ。あ、名前はパリのオペラ座バレエ団のエトワールだった、シルヴィ・ギエムから付けたんだけど」
しるびーだか、しるこサ○ドだか知らんけど、別にそんなの興味無いし。
「ごめんね、早く帰りたいの 」
手提げカバンを肩に掛けると、「えー、どうしてぇ? 」とユカが不満げに言う。まるで、自分の誘いを断る事があり得ない事の様に。
エリは我儘なお嬢様に言ってやった。
「アタシもペット飼ってるんだ 」
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