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修学旅行 Ⅰ
始まってみると、なんだかんだ京都の修学旅行は楽しかった。
姉に「参考資料として写真撮ってきて~」と頼まれたから、俺だけ半分取材をかねていたけど。
格天井とか、屋根の万十軒瓦とカエズまたぎ鬼の部分とか、マニアックな指定を貰った。家紋瓦の資料を使って、時代モノを創作したいらしい。
……京都は何百年も昔から現在まで全部が現役だけどな。
修学旅行の一日目は城だった。玉砂利が敷かれた庭園は綺麗に手入れされていて、砂利に足をとられたから、「忍者でも無音で忍び込むのは無理」と皆で話した。
二日目は寺だった。座禅中、背中を叩いてもらった。『警策』といって、歩いてまわるお坊さんに頭を下げると、生徒の希望に応えてパシッと棒をあててくれる。音は響くけど、痛みはない。不思議な爽快感があった。
家の宗派の関係でお堂に上がれない生徒が何人かいて、控え室のある建物で待たされていたから、終わった後にわざわざ話題にはしなかったけど。
三日目は班ごとに分かれて自由行動。俺達は旅行ガイドブックに載っている有名な観光名所と、学問の神様の神社、説法が面白いことで有名なお寺を一つずつ選んで、あとはお土産選びの時間に当てた。
本当のことを言うと、行きたい神社仏閣は他にもあった。でも、格式が高すぎて、修学旅行のついでで訪問するようなところではなかったから、遠慮することにした。
二年から持ち上がったうちのクラスの担任、ハマセンこと浜田先生は、クラスの生徒に適当に声を掛けて、適当に写真を撮っていた。
「卒業アルバムに載せるから、受け狙いで変な顔すると後で後悔するぞ~」と言いながら。
覚悟はしていたけど、自由行動の時間になった途端、異性からの呼び出しで班のメンバーがバラけた。生徒間で事前に連絡が回ってきていた『告白イベント』だ。
「絶対、集合時間に遅れるなよー!」と言いながら、各自を見送った。
最終的に俺と伊織だけが班に残された。
「とうとう俺達だけになってしまった……」
「瀬名。ポジティブに考えよう? 身軽になった分、融通が利くよ」
「……それもそっか」
俺達は途中で鉢合わせた朱里の班の女子達や、部活で仲の良い、他クラスの男子の班と一緒に回った。
観光先を変更することはしなかった。俺と伊織のレポートを、後で同じ班のメンバーに写させる予定だったから。有料で。
学食一食分で手打ちだ。『青い春の思い出作り』の協力者だから、このくらいは許されると思う。
俺は伊織と一緒に、やけくそで写真を撮りまくった。おかげで俺のスマホのデータフォルダは、他班と他クラスと伊織の写真ばっかのカオスなものになった。向こうのスマホも多分……。
後でデータを本人に渡そうと思っている。
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