in 一つの布団

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in 一つの布団

 ──そして、現在に至る。  布団に隠れて静かにしていたら「二回目の点呼はランダムだって!」と、他クラスにも顔が広い深津が、小声で教えてくれた。  今のうちに各自の布団に戻って欲しいんだけど、誰も動かない。悪ふざけが大好きな蒔田と古村が俺の布団から移動してくれないと、俺も動けないんだけど。  おかげで俺がお邪魔している布団の持ち主、伊織が、一番壁際で息を殺している。 「ごめん。伊織」 「ごめんはなし」  隣にいる伊織の体温が伝わってきた。文化祭の練習の時の、手品の箱の中で密着していた時よりは空間に余裕がある。でも、『同じ布団の中』という人生初のシチュエーション相手が男というのがもう、しょっぱい。  もし、伊織のファンの女子にこのことが知られたら、俺は多分、体育館裏に呼び出されると思う。怖い方の意味で。 「二回目の点呼来るの、いつ?」 「だからランダムだって!」 「声、落とせ~っ」  俺の声に返事してくれた深津と佐伯も、最初の場所じゃない方角から声が聞こえた。  っていうか、みんなで投げた枕、どこ行った?  俺は溜め息を吐いて、枕なしで仰向けになってから、言った。 「伊織。俺、寝るわ。二回目の点呼が終わったら、起こして」 「瀬名、この状況で眠れる?」  小声で囁く伊織の息が温かい。 「だってこういうの、二回目だし……」  男同士はノーカウントということで、許してくれよ。 「じゃ、おやすみ」 「マジか……」  俺は目を閉じて、いつものようにゆっくり呼吸し、頭の中でカウントを始めた。深海に潜るイメージで身体を脱力させて、一気にノンレム睡眠まで持っていく。  そして、俺は、そのまま寝た。  翌朝まで。
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