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「今のは二年前の俺が思っていたことだ」
「……おっさんも家族がいないの?」
「両親を事故で亡くした。車に突っ込まれたんだ。運転手は酒を飲んでいた」
「えっ……」
「兄弟もいない。独りぼっちだ」
「……」
「世の中ってのはな、ものすごく不公平なんだ。真面目に生きている奴ほど損をし、腐った奴ほど笑って楽しく生きられる……理不尽極まりないのが現実なんだよ。そんな汚い世界に負けるな。必ず生き延びろ」
オレの頭をくしゃくしゃと撫でた男が微笑する。そのまま立ち去ろうとする背中を追い掛けた。
「おっさん――じゃなくて兄ちゃん! 独りぼっち同士で兄弟になろうよ! オレ、兄ちゃんの家に住みたい!」
「やめとけ。俺はガキ一人を育てられるような器じゃない」
絶対にこの人を逃がしちゃダメだ、とオレの勘が告げていた。腕を掴んで離さなかった。
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