劇場型神隠し

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 秋月は今島に定期的に行くようになり、島民とも親しくなっていた。元の生活に戻った島民は誰も神隠し中の記憶はなく、あの日は時間泥棒にでも遭ったかのように気付けば夜になっていたという認識しかなかった。島民は今島の唯一の犠牲者である五十嵐愛理が消えてしまった事を深く悲しみ、世界中から注目された事で以前はほぼ居なかった観光客が増えていたけれども今島を売り込む事はしなかった。逆に首都では観光客が減り、転出も多くあった。  秋月は三人の友人と同僚を失ったが、暴力的とは言えない愛理の意志を思い返すと涙は出て来なかった。  いつも何かにつけて騒ぐアカウントが居ない所為か神隠しに遭った条件に薄々気付く人も出て来て、 『首都に住んでるんだけど、生き残りのアカウントに島民が消えて清々してよかったなって送ってました。神隠しの日はたまたま地方に行ってて……もし、あのまま首都に居たら自分も消えてたかも知れません』  とSNSへ投稿する人も数人居たが、それらを責めるような反応は起こらなかった。一粒の雨はやがて嵐を起こすのだと身に沁みていたからだろう。当局の情報を待つようになり、投稿が減っていくネット上は不気味なほど静かで、平和だった。
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