劇場型神隠し

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 二度目の神隠しに遭った人の共通点を見つけるのは難しいだろう。年齢は十代から八十代まで、職業も様々で神隠しが起こった時に同じ場所に居ても明暗は分かれた。目の前で消えた家族、恋人、友人。ライブ配信していた試合中の野球選手、アイドルも政治家も神隠しに遭っている事が明らかになった。  佐伯は、消えてしまった十六歳の息子のSNSアカウントが確かに愛理のSNSアカウントに『お前が死ねば解決するかもな』『おめでとう! 歴史に残ったじゃん』『売名だろどうせ。島の馬鹿どもが消えたのもお前がやったんだろ』等のコメントを送っているのを確認した。仕事として佐伯は神隠しに遭った人のアカウントを調べ、神隠しの条件が正しく適用されたのだと知った。  政府が会見を開き、神隠しとしか言いようがない事象について調査を続けていくと宣言した。神隠しの条件は公表されなかったが、今島で起こった一度目は予兆に過ぎず、二度目の事象が覆る事はないという見解を示した。首都神隠し事件と名付けられ、最終的な被害者数は二万人を超えたこの出来事は、通称“審判の日”と呼ばれて長く語り継がれるようになる。
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