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歩美に、バイトの様子を尋ねてしまったのは、まるで自傷行為だと自分でも思った。
でも、じっとしていられなかった。
『バイトどう? 岡野くんとはシフト一緒になるの?』
『よく一緒になるよ! いろんな大学の人と一緒になって、すごく楽しいよ。マコト氏もどう?』
そんな返事が返って来て、胸を撫でおろす。
私は実家から大学に通っているし、お小遣いにも困っていない。
岡野くんと一緒にバイト……それは考えたことがないわけじゃなかったけど、億劫な気持ちもあった。
別に、二人の間に何が起きているわけじゃないし、きっと何も起こらない。
けど、日が経つにつれ、私の探りに対する返事は徐々に変わっていった。
『マコッチとアパートが近いのを知ってびっくりした』
『帰りが遅いときはマコッチが送ってくれるんだよ。マコッチって優しいよね』
『返事遅れてごめん。マコッチと好きなアニメとかゲームが被ってて、話し込んで遅くなっちゃった』
私は歩美のメッセージから目を逸らし、スマートフォンをベッドに放り投げた。
わかってる。私が岡野くんのことを好きだなんて歩美が知らないことくらい。
「アパートまで近いって……なによ……岡野くんが優しいなんて、私の方がずっと先に知ってるんだから……! 大体、私が岡野くんのバイト先に歩美を連れて行ったからたまたま出会っただけで……」
そこで私は言葉を飲み込んだ。
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