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50話 星詠みの力は本物のようです。
「――星だ」
イディアは肩を竦めてこともなげに言った。
「星が示したんだよ。凶星とともに神の信徒が現れる……ってな」
「凶星……」
「神の、信徒」
「神の信徒ってのはリリー、アンタのことだ」
ロジェとリリーがそれぞれ呟き、イディアはリリーを指差した。リリーがフェデーレの次期当主であるため、ロジェではなく、リリーがそうということだろう。
「凶星は……そうだなぁ……」
イディアは暫し考えるように顎に手を当てる。そしてふっと明るい笑みで二人を見た。
「殺されるんだろ? 俺」
「っ!」
リリーは驚きに言葉を詰める。まさか本人からそんな言葉が出てくるとは思わなかったのだ。
対してロジェは冷静に、表情を変えずに問いかける。
「……どこでそれを?」
イディアはふっ、と笑って、上を指差した。ここに来たときは夕方だったのに、いつの間にか暗くなり始めている。微かに星の瞬きが見えた。
「星詠みだから」
その言葉は夜の闇が降りてくる今、より信憑性をもたせた。つまりは星から授かった情報だと言う事だろう。
「アンタらはそれを止めに来たってとこかな?」
図星にリリーとロジェは顔を見合わせる。星詠みとはそんなことまで分かることなのか。まるで神降ろしのそれだ。
イディアはそれと、と付け加えた。
「結婚も星からだ。神の信徒が俺の結婚相手だってな」
「なんでそんなことに……」
ここまで聞いて星詠みの凄さにリリーは圧倒されたが、結婚のことだけは首を傾げずにはいられない。
神降ろしではリリーは星詠みと会うようにとしか言われていないはずだ。けれど星詠みはリリーが結婚相手だと言う。この食い違いはなんなのか。神降ろしの言葉はつまり星詠みと会って結婚しろ、ということなのだろうか。
ぐるぐると悩むリリーだが、イディアは肩を竦めるだけだった。
「さあ? なんでリリーが俺の結婚相手なのかは知らないさ。けどまぁ、話せるのはこんなところだ。それよりリリー、フェーンにいる間は俺の家に来ないか?」
「えっ!?」
「どうしてそうなる」
驚くリリーの前にロジェが出て、イディアから壁になる。イディアは気にせずひょこりとロジェから顔を出してリリーに言った。
「俺が殺されるのを止めに来たんだろ? なら四六時中一緒にいるのが好都合だ」
「それなら俺が行く」
けれどまた、ロジェがぐいとイディアの目線上に出てくる。イディアは流石にうっとおしそうに手を振った。
「俺が御免だ。リリーが良い。結婚相手としての仲も深めたいしな?」
最後にリリーを見てイディアはにっと笑う。
「おい、調子に乗るのもいい加減に――」
ロジェはイライラと怒りを露わにしようとした。けれど。
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