50話 星詠みの力は本物のようです。

1/1
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ

50話 星詠みの力は本物のようです。

「――星だ」  イディアは肩を竦めてこともなげに言った。 「星が示したんだよ。凶星とともに神の信徒が現れる……ってな」 「凶星……」 「神の、信徒」 「神の信徒ってのはリリー、アンタのことだ」  ロジェとリリーがそれぞれ呟き、イディアはリリーを指差した。リリーがフェデーレの次期当主であるため、ロジェではなく、リリーがそうということだろう。 「凶星は……そうだなぁ……」  イディアは暫し考えるように顎に手を当てる。そしてふっと明るい笑みで二人を見た。 「殺されるんだろ? 俺」 「っ!」  リリーは驚きに言葉を詰める。まさか本人からそんな言葉が出てくるとは思わなかったのだ。  対してロジェは冷静に、表情を変えずに問いかける。 「……どこでそれを?」  イディアはふっ、と笑って、上を指差した。ここに来たときは夕方だったのに、いつの間にか暗くなり始めている。微かに星の瞬きが見えた。 「星詠みだから」  その言葉は夜の闇が降りてくる今、より信憑性をもたせた。つまりは星から授かった情報だと言う事だろう。 「アンタらはそれを止めに来たってとこかな?」  図星にリリーとロジェは顔を見合わせる。星詠みとはそんなことまで分かることなのか。まるで神降ろしのそれだ。  イディアはそれと、と付け加えた。 「結婚も星からだ。神の信徒が俺の結婚相手だってな」 「なんでそんなことに……」  ここまで聞いて星詠みの凄さにリリーは圧倒されたが、結婚のことだけは首を傾げずにはいられない。  神降ろしではリリーは星詠みと会うようにとしか言われていないはずだ。けれど星詠みはリリーが結婚相手だと言う。この食い違いはなんなのか。神降ろしの言葉はつまり星詠みと会って結婚しろ、ということなのだろうか。  ぐるぐると悩むリリーだが、イディアは肩を竦めるだけだった。 「さあ? なんでリリーが俺の結婚相手なのかは知らないさ。けどまぁ、話せるのはこんなところだ。それよりリリー、フェーンにいる間は俺の家に来ないか?」 「えっ!?」 「どうしてそうなる」  驚くリリーの前にロジェが出て、イディアから壁になる。イディアは気にせずひょこりとロジェから顔を出してリリーに言った。 「俺が殺されるのを止めに来たんだろ? なら四六時中一緒にいるのが好都合だ」 「それなら俺が行く」  けれどまた、ロジェがぐいとイディアの目線上に出てくる。イディアは流石にうっとおしそうに手を振った。 「俺が御免だ。リリーが良い。結婚相手としての仲も深めたいしな?」  最後にリリーを見てイディアはにっと笑う。 「おい、調子に乗るのもいい加減に――」  ロジェはイライラと怒りを露わにしようとした。けれど。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!