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第8話 胸の内
〈宇良先輩はあくまでお芝居をしている。しかし、後ろめたい行為をした部員は全員、顔が真っ青になっている。宇良先輩にバレた……そう確信していると思う〉
王の前に行き、エミリーの母国である小国に伝わる重厚で静謐さを併せ持つ、王の受難、そして再生へと至る道程を描いた曲を歌う。
生気を失い土気色した顔に垂れる眉の隙間から、王の証である威厳のある眼光がエミリーを射抜く。そして王は力強くエミリーに伝えた。
「ありがとう」
その言葉が王の最期の言葉であり、王から唯一、感謝を受けたエミリー、そして彼女の夫であるフェリクセンが、一か月の喪が明けたあと、王、女王の座についた。
永く永く彼らの子孫の代まで王国は繁栄を築いた。
〈最後のセリフを宇良先輩が語り出す前に彼のそばに寄り沿い、軽く腕を回しふたりで遠くを見る仕草で即興劇を終えた〉
「すごーい、ちょっと鳥肌立っちゃった」
「さすが宇良くん、一年の子も良かったわよ」
拍手の中、宍戸部長とかわいい系男子、都成先輩が感想を述べる。
他の生徒は、感動するか下を向いているかの二通り……。
これでよかったのかな?
私の変わった声を、美声と置き換えるなんて、宇良先輩もすごいことを考える。
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