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「ありがとうございました」
「いいよー、ボクは行くけど気分は悪くない?」
養護教員がおらず、そのまま保健室のベッドに横になっていると、連れてきてくれた男子が少し水滴が浮いている冷たいペットボトルを私に差し出した。
「はい、少し横になれば大丈夫です」
「ボクは2年の都成伊都(となりいと)、キミは?」
「私は1年の咲来常(さくらとこ)です」
「そっか、じゃーね咲来さん」
「あ、あの……ありがとうございました」
「いいよ~気にしないで~」
笑って私にひらひらと手を振りながら、保健室のドアを閉めた
すごくいい先輩。
都成先輩か~。童顔だから女子に可愛い系男子枠でモテるんだろうな。
なーんか、昨日から先輩の男子が私に優しくしてくれる。それに反比例して女子に敵を作っていそうで怖い。お願いだからそっとしておいてほしい。
いろいろと考えていたら睡魔が襲ってきて、完全に意識が微睡み始めた。
目が覚めたら夕方。戸締りにきた養護教諭に起こされ、部室に戻るとすでに誰もおらず、ジャージ姿のままだったので、制服に着替えて学校をあとにした。
電車に乗ろうと駅前まで来たが、慌てて建物の陰に隠れる。
あれは宇良先輩と3年の演劇部部長の宍戸先輩。
ふたりで駅前の建物、2階にあるカフェの階段を登っていった。
やっぱりつきあってるのかな?
朝もふたり仲良く校舎の中に入っていったし。
宍戸先輩って女子の中では、かなり背が高い方でスタイルもいい。演劇部では男性役もこなせるらしく、少なからず女子の中にも宍戸先輩のファンがいる。
だとするとお似合いのカップルだね。
私のような根暗女子とは違い、明るく照らされた道を歩んできたふたりは別世界の住人にみえる。
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