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「悪いけど、離れたところでひとりで練習してくれる?」
ふたりほどオロオロとしているが、残りの3人が強く迫るので、屋上へ移動して練習しようとしたが、いつの間にかドアの前にかわいい系男子、都成先輩が立っていた。
「あれ? 今日は1年の子だけ?」
「先輩たちは今日〇△市へ演劇鑑賞に行ってます」
先ほど強い口調で私に迫った同級生の女子が答える。
「ホント、ありがとう。あっそうそう!」
都成先輩は礼を伝えて、一度背を向けたが、なにかを思い出したのか振り返った。
「そういうのは無しにしようよ?」
「え?」
「咲来さんと仲良くしてあげて、ね?」
さっきの話聞いてたんだ……。
都成先輩がいなくなると、部屋の中が沈黙で包まれる。
「……まで」
え?
「都成先輩までアンタのこと庇って、アンタいったいなんなの?」
先ほど都成先輩と会話した女子が厳しい声音で詰問する。
それはこっちが聞きたい。
なぜ先輩たちは私に優しいの?
そのせいで、あらぬ誤解されてワケのわからない嫉妬の対象になってしまっている。
私を睨みつける目が恐い。小学生の頃に高い声のせいでイジメられてから、ひとの目をみて向き合うのが恐くなった。
そのせいで、前髪で自分の視線をなるべく隠し、マスクをしているととても気持ちが落ち着くようになってしまった。
「先輩たちに密告っちゃお」
屋上へ行こうと演劇部を出ようとしている私にそんな言葉が投げられた。
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