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本郷恵美香は小さい時から本が好きだった。好き、というより執着している。
エミカは不細工だ。その上眼鏡をかけている。性格も独特で友達もいない。学校や地域の図書館に入り浸り、書店で立ち読みを続けた。本当は漫画が読みたいのだが、雑誌もコミックも中身を見ることができない。小学生の頃から自然と美術コーナーの画集を見ることが多くなった。いつも同じ本を長時間眺めているものだから小さな書店の店主に目をつけられた。
「お母さんと一緒に来てください」
見かねた店主に言われてエミカは素直に母親を連れて来た。
「お母さんですか?この本を買い取っていただけますか。お嬢さんが毎日手に取るものだから、こんなにくたびれてもう商品にはなりません」
五千円ほどする定価を見て母の泰子は仰天した。
「もう、ここへ来るんじゃないの!」
だがエミカは本を見たとたんにお気に入りのページを開いた。繊細な風景画だ。
「いつも長時間こうなんです。もう、お嬢さんの本ですよ。それとこれからは出入り禁止でお願いします」
母は泣く泣く支払いをした。エミカは当然のように本を握りしめて帰宅したが後から帰って来た父の孝にげんこつで殴られた。ただでさえ父親は支配的で生活費も最低限しか渡さない。本人はブランド物を身に付け美食をするのにエミカのこづかいに回す金は出さない。
どうしても本を読みたいエミカは万引きを始めた。
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