7 告白と提案

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7 告白と提案

「「え……?」」 シュタイナー夫妻が驚いたように私を見つめる。 「お姉ちゃん……どうしたの? どこか痛いの?」 アデルの小さな手がテーブルに乗せていた私の手に触れてくる。 「い……いいえ、大丈夫よ、アデル。どこも痛くないから……」 まだこんなに小さいのに、なんて優しい子なのだろう。涙ぐみながら、そっとアデルの頭を撫でると、婦人がためらいがちに声をかけてきた。 「フローネさん……本当は尋ねるのをやめようかと思っていたのだけど……、もしかすると何か深い事情があるのじゃないかしら?」 「え……? な、何故そう思うのですか……?」 するとシュタイナー夫妻は顔を見合わせ、再び婦人が話しかけてきた。 「それは、あなたが持っていた荷物よ」 「え……? 荷物……?」 「出会った時、あなたは大きなボストンバックを持っていたでしょう? あんな大きなボストンバックを持って、お祭りに来ているのは少しおかしいと思ったのよ」 「それに旅行だと話していたが。普通なら荷物はホテルか駅に預けて観光をするだろう? 現に私達は荷物は全てこのホテルに預けておいた。それなのに、フローネさんは荷物を持ち歩いていたのだからな。……何か、深い事情があるのだろう? ここで知り合ったのも何かの縁だ。話してみないかね?」 「ええ、そうよ。聞かせて頂戴?」 優しい声で語りかけてくるシュタイナー夫妻。 本当に……バーデン家の人たちとは大違いだった。……この人たちになら、自分の辛い胸の内を話してみてもいいかもしれない。 「じ、実は……」 私は涙混じりに、今までの経緯を全て話した。父を亡くしてから、バーデン家を追い出されるまでの話を全て。 その間、シュタイナー夫妻はじっと私の話に耳を方向け、アデルはテーブルでお絵描きをしていた。 「……そんなことがあったのか……」 沈痛な面持ちでシュタイナー氏が呟く。 「可哀想に……そんな酷い目に遭ったのね……? さぞかし、辛いことだったでしょう?」 婦人が同情の込められた目で私を見つめる。 「も、申し訳ございません……朝から、このようなお話を聞かせてしまって……」 ハンカチで溢れる涙を拭いながら、謝罪の言葉を述べた。 「何を言っているのだい? フローネさんは何も悪いことはしていないだろう?」 「ええ、そうよ。悪いのはそのバーデン家の人たちなのだから」 「ですが……私が思い上がっていたことは……事実ですので……」 そうだ、私は2人の幼馴染ということで何処か思い上がっていたのだろう。 だからクリフに『僕が一生面倒を見てあげるから家においで』と言われた時、プロポーズの言葉だと勘違いしてしまった。 自分の立場も顧みずに……。 「いいえ、フローネ。あなたは少しも悪くないわ」 「ああ、その通り。自分を卑下する必要はどこも無いからな?」 「あ、ありがとうございます……」 シュタイナー夫妻の優しい言葉が身に染みて、再び涙が浮かぶ。 「お姉ちゃん……泣かないで?」 絵を描いていたアデルが私の手に触れてきた。 「アデル……」 本当に、なんて心の優しい人たちなのだろう。この人たちのお陰で自分の心が救われた気がする。 「でもフローネさんの今の事情がよく分かったわ」 「ああ、そうだな……」 夫妻は再び目を合わせて頷きあうと、シュタイナー氏が私に声をかけてきた。 「フローネさん。そういうことなら、どう? 私達と一緒に『レアド』に来ないかね?」 「ええ。実はアデルのシッターを捜していたのよ。この子はこんなにもフローネさんに懐いているわ。どうかしら? あなたさえよければアデルのシッターになって貰えないかしら?」 「え……? アデルの……シッターに……?」 それは、思いもかけない夫妻からの提案だった――
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