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アグレイとおばば
「アグレイや、ほんとうに行くのかね?」
ブルツを履きなおしながら、背中でおばばの言葉を聞いていたアグレイは、答えた。
「ああ、おれは、どうしてこんななのか?
見つけたいんだよ。このまんまじゃ俺には明日もやってこないんだよ。」
「外のサンドバギ借りてもいいか?」
おばばは、それ以上何も言わず、何やら手を動かしている。
ぐろるる ぐろるる
エンジをかけ、機体を温める。
「これを、持っていきな。」とふんと、アグレイの胸元にはおばばが握っていたらしい握り飯が入った袋が飛んできた。
「み、見つけたら、戻ってくるよ・・・。」
アグレイは、おばばを右の眼だけで見つめる。
ぶおろる
アグレイの下手な運転に任せ、サンドバギが進む。見送るおばばの目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
その日、キカイが沼のおんぼろ小屋からアグレイが旅立ったのだった。その肩には砂ネズミ「ハムサ」。
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