第一章 弦先輩! お風呂から上がったらパンツくらい穿いてください!

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「風呂上りは暑いんだ」 「エアコン、入れてるでしょう!?」 「細かいことにうるさいぞ、千尋。男同士なんだから、別に構わんだろう」  確かに弦と千尋は男同士であり、しかも幼馴染である。  別に、すっぽんぽんを見ようが見られようが、構わないと言えば構わない。  それでも小学生の頃から、親兄弟の裸も見なくなった千尋だ。  恥ずかしいものは、恥ずかしい。  いいかげん慣れろ、と弦は言うが、こればかりは慣れそうにもないのだ。 (せっかく、憧れの弦先輩と一緒に暮らせるようになったのに!)  千尋は悔しく、悲しく、情けなかった。  幼い頃から、千尋と共に育ってきた、弦。  千尋は弦を、凛々しく、正しく、礼節を守る、立派な人物と思っていた。  泣き虫で、いじめられていた僕。  小柄で、髪を肩まで伸ばしていたせいで、女みたいだとバカにされていた。  二つ年上の弦兄ちゃんは、そんな僕をいつも助けてくれた。  一緒に遊んだり、宿題を見てくれたり、守ってくれたりもした。  それが、一つ屋根の下で暮らすようになってから、音を立てて崩れていく。  今まで見えなかった負の部分が、どうしても目に入る。  しかし、それが人間というものだろう。  逆に、弦がいつまでも立派過ぎる男だったら、不自然だ。  千尋は、飾り気のない家族のような存在の弦を、喜ぶべきだろう。  だがしかし。
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