第一章 弦先輩! お風呂から上がったらパンツくらい穿いてください!

4/10
前へ
/146ページ
次へ
 朝、千尋は弦より早く起き出す。  朝食の支度と、お弁当を用意するためだ。  大喰らいの先輩のために、千尋はお弁当をいつも三つ用意していた。  ひとつは、自分のお昼。  ひとつは、弦のお昼。  そしてもうひとつは、弦の早弁用のおむすび。  とてもじゃないが昼まで腹が持たん、という弦だ、  そんな彼のために、千尋は昼の弁当とは別に、大きなおむすびを二個作って持たせていた。 「あっ。そういえば弦先輩、今日から体育が柔道になるって言ってたっけ」  一限目の体育が柔道となると、いつもよりお腹がすくだろう。  おむすび二個では、足りないかもしれない。  そう考えた千尋は、自分用に作った弁当を、おむすびの代わりに弦のバッグへ入れた。  自分はあまり食べる体質ではないので、お昼がおむすび二個でも大丈夫だ。 「先輩。お弁当、バッグに入れましたからね?」 「ああ」  先に、玄関から出る千尋。  二人そろって一緒に登校することは、滅多にない。  だが、そっと見守るように、弦がその後すぐに寮を出ることを、千尋はちゃんと知っている。  そんな不器用な愛が、まるで本当の家族のようで、千尋は嬉しかった。
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加