黒猫

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 それから、事件には予想外に早く進展があった。  発生から1週間も経たずに、N市より南、八郎潟跡近くの半島の崖で、古谷夫妻の自家用車が乗り捨てられているのが発見された。車内には相当量の血痕が残っており、古谷家で発見された遺体のものであることが確認されている。恐らく、切断された首が乗せられていたのだろう、とのことだ。  運転していたであろう利昭氏は見つかっていない。  なお、楓の予想通り、古谷忍の乳がんの診断書も存在したそうだ。そして、遺体にも確かに病巣があったという。  混乱を極めた捜査本部は、状況から古谷夫妻の心中というストーリーを組み上げた。病を苦にした忍が自殺したか、夫の利昭と何らかの諍いがあったか。結果的に忍は死亡し、その遺体の一部を持って利昭が逃亡、自殺した……というセンで事件を閉じた。  と、いうのは楓の予想である。  関係者から外れると、民間人にそういう情報は入ってこないものなのだ。同時に姿を消した古谷真の方は、更に手に負えなかったのだろうか。結局、古谷夫妻と古谷真は行方不明のまま、事件はお蔵入りしている。  もう誰も、彼女等を探す者はいないだろう。
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