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「……ウソつき…」
休日出勤だと嘘を付いて、あの女性と朝から会ってデートしていたのか?
楓、僕からの電話はそんなに邪魔だった?だから、眉間にシワを寄せて電源まで切ったのか?
よく「砂の城のように、2人の関係は脆くも簡単に崩れてしまった」と書かれた小説やマンガがあるが、本当にそうだ。
信頼が壊れるのは一瞬だ。
別れの予感のようなものは常(つね)にあった。
だけど、こんな形で知りたくなかったよ。
楓―――…。
楓は今までなに食わぬ顔で、僕に愛を囁き、抱き締めキスをしてきたんだな?
楓にとって僕は、唯一の存在ではなかったんだな?
好きだと言ってくれた楓を、僕は信じ続けていたいと思っていたのに……。
それが、脆く簡単に僕の中で崩れ去った。
僕にとっては残酷な、寄り添いながらの2人の笑顔。その写真をスマホで撮って楓に送った。
それに気付くのはいつだろうな?
と思いつつ、僕は踵を返してその場を離れた。
外は冷たい雨が降っていた。
冬の名残がまだある中で非常に寒い。
フード付きのブルゾンを着ていたからフードを被り、雨に濡れながらトボトボとずっと歩いていた。
寒いけど雨降りは丁度良かった。
僕の目から涙が、ポロポロと溢れ落ちていたから――――…。
簡単にはこの愛情はなくならないけど、見切りを付けないとな…。
あの家を出て行こう。
断ち切る為にも、こういうのは早い方が良いし…。自分の荷物は少ないと思うから、荷造りは直ぐだろう。会社の社宅が空いていたら、そこに引っ越そう。
そんなことを考えながら歩いていた。
僕の気持ちと共に
雨は雪に変わっていった―――…
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