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僕は歩いて家に帰って来た。 かなりの距離を ただひたすらに歩いた。 その間 冷静にもなれた。 本当は、家には帰りたくなかった。 楓に会いたくなかった。 あのままどこかに行きたかった。 だけど、逃げずに楓と話し合おうと思った。 時刻は18時過ぎ。 普段もそうだが、楓はまだ帰っていなかった。 連絡もない。まだあの写真を観ていないのだろう。 寒い部屋に暖房を着け、濡れた衣服を洗濯機の中に入れ、そのまま風呂に入った。 壁に両手を付け、シャワーのお湯を出しっぱなしで、項垂れながら頭から浴びて温まる。 鏡に目を向ける。 鏡に写る自分の顔と体。 色白で顔は女顔だが、豊満な胸もない貧相な体は男の体。 自分の体を見ていたら、突然 昔の事を思い出した。 はじめて自分がゲイだとわかったのは中学2年の頃。 中高一貫の全寮制男子校にいた。 寮生活で中高と思春期に男ばかりの閉ざされた環境だった。 その中で男同士で恋愛をしている人たちが多った。 そして自分も―――… 初恋は若くて芸能人並みのイケメンで、人気があった男性教師。気が付くとドキドキしながら目で追っていた。 放課後に視聴覚室に呼び出され、 『俺の事が好きなの?』そう言われて、僕は素直に頷いた。 先生は妖艶な笑みを浮かべて、僕を抱き寄せキスをした。僕は抵抗もせずに、そのまま先生を受け入れ抱かれた。だって好きだったから。先生が遊びだとしても、それでも良いとも思っていた。 何故か あの時の息使いまで思い出して 次第に体が疼き 昂っていく――――…
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