喜一 side

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喜一 side

次の日の月曜日―――… 「安堂は結婚しないのか?」 昼食に会社の近くの食堂で、同僚2人と俺で日替わり定食を食べていた。 目の前に座っている同僚の林が、唐突に話を振るので、俺は一瞬 戸惑った。 「……まあ、今そういう相手はいないから」 「あれ?彼女いたよな?」 何故 お前が知っているんだ…。 「彼女とはとっくの昔に別れた」 「へぇー、じゃあさ、今度合コンしない?」 「パス。しないし、行かない」 悠がいるのに行く必要性がない。 「えぇー。何で?いいじゃん。あっ、もしかして好きな人でもいんの?安堂なら声を掛けたら一発なのに」 「いいだろう?別に。ほら、早く食えよ」 好きな人と両思いだよ、と言いたいが止めておく。 林の隣に座っている もう1人の同僚の中澤は、考え込むような表情を浮かべる。 「そう言えばさぁ、安堂って、お見合い話 専務から来てるよね?」 俺は溜め息を吐き出した。 「何で知ってんの?確かに見合い話の打診はあったけど断ったよ。それに、俺は結婚はしないよ」 林がお茶を一口飲んでから 「何で?確か跡取りだったよな?実家 会社経営してるんだろう?なら結婚も子供も必要だろう? うちはデキ婚だけど、子供は可愛いぞ」 「林、結婚して子供がいるのに合コンはダメだろう?」 中澤が呆れたように林に言う。 「いやいや、誤解すんなよ、俺は行かないよ!頼まれたからさぁ。 安堂が来たら合コン行っても良いよって子がいるらしくてさ。ほら、総務の里田さんだっけ?新入社員の。 その子狙いの奴が何人かいて、安堂も誘えば釣られてくるかもって話でさぁ。それで誘った訳よ」 「そんなの勝手にやってろよ。知らない。俺は行かないよ」 とその時、 「おい、噂をしたら…あの子、里田さんじゃないか?」 中澤が小声で、林に言う。 入り口に視線を向けたので釣られて後ろを振り返り見てみると、里田さん?だろう人が女子3人と来た。 「そうそう、あの1番かわいい子が里田さんだ」 『俺の中で1番かわいいのは悠だけどな!』 そう心の中で声を大にした。
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