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先生に呼び出されるたび嬉々として抱かれた。
その先生が転勤するまで約1年間 続いた秘密の関係。
あれから恋人も出来たし、別れもあった。
皆 僕を優しく抱いてくれた。
あの時のアノ人の唇の感触、あの時のアノ人の触れた指先、皆、僕のアナルの奥まで突き、揺さぶり、僕を喘がせ、僕の中で、僕で感じて果てていく―――…
それを思い出しながら、僕はペニスを扱き、アナルに指を出し入れしていた。
「……っ、んっ」
小さなうめきと快感と共に、頭は一瞬真っ白になり、僕は壁に向けて白濁を吐き出した。
虚しい行為――――…
それでも僕だって男だ。
疲れてる時や、イライラした時に無性に抜きたくなる。
ため息を付きながら、トロリとした白濁をシャワーで流した。
大学に入り、楓に恋をし、楓とつき合ってから、僕は誰ともセックスはしていない。
楓と初めてセックスをしようとした時、楓は勃起したが、僕のペニスを見た瞬間 萎えてしまった。
それが悲しかった。
楓は元々ノーマルだから仕方ないと思うしかなかった。
それでも抱き締め合っていればそれで満足できていた。
それはウソじゃない。
でも 時々 酷く疼くんだ―――…
疼いた体を僕は1人でこうして慰めていたんだ。
それなのに楓は浮気していた。
ふと思い出す。
――― 相殺(そうさい)
ネットで見付けた言葉。
『差し引いて、互いに損得がないようにすること。帳消しにすること。また、長所・利点などが差し引かれてなくなること。』
楓の浮気を帳消しにするには、僕も同じ事をすれば良いんだ。
安易な考えだとわかってる。
だけど、僕だけが我慢するのはもう止めた。
身体を洗い流しシャワーを止めた。
その時、バタンとドアの閉まる音が聞こえ、一瞬ビクッとした。
楓が帰ってきた。
自然と僕の口角が上がるのがわかった。
ねぇ、楓。
どんな言い訳を僕にする―――?
そんな事を考えていたから。
湯気で曇る鏡を手で拭く。
鏡に映る僕の表情は、
妖しく ほくそ笑んでいた―――…
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