楓 side

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楓 side

「楓、今日の夜は、一緒に家でご飯食べてよ?楓の好きな物用意するからさ」 「うん、予定ないからいいよ?楽しみにしてる」 「絶対だよ?」 「わかってるって」 朝 出勤前に上目遣いで「絶対だよ?」なんて言う悠が可愛いくて顔が緩む。 微笑みながら悠の頭を撫で『わかってるって』って応えたくせに、この日は新規プロジェクトの立ち上げで残業になりそうだとそう思い、早めにメッセージを送った。 『悪い、残業になりそう。なるべく早く帰るから』 『お疲れ様。わかった。仕事頑張って』 送った後でバタバタと忙しくなり、案の定残業になった。 そして、すっかり悠との約束を忘れてしまった。 スマホを観ても悠からのメッセージはあれからなかった。 あったのはセフレの女から。 だから、女とホテルに行く事にした。 女とヤり終わりシャワーをして戻ると女がベッドで寝ていた。 スマホを観ても悠からの着信はなく充電も残り僅かだった為、電源を切った。 疲れていたので、その日ホテルにそのまま泊まった。 朝帰りしたオレに悠は笑顔を向け 「おかえり」 と出迎えてくれた。 少し驚いたが、悠の笑顔に安堵した。 「…ただいま、ごめん。残業ついでに同僚と飲みに行って、飲みすぎてその同僚の家に泊まって来た。充電切れたから連絡できなかったんだ。連絡しなくてごめんな?」 オレが言い訳した途端、少し眉を寄せ陰りのある表情になったが、直ぐに明るい表情に変わった。 「しょうがないな、今度はちゃんと連絡して?」 「ああ、本当にごめんな?悠…」 そう言ってオレは、悠を引き寄せ抱きしめた。悠は上目遣いでオレを見る。 「お腹空いてない?昨日のあるから一緒に食べよ?今日、休みでしょう?映画観たいのがあるんだ。行こう?」 「ああ、そうだな。行こうか」 悠の優しさに甘え 悠の我慢で成り立っていたオレたちの関係 オレはそれに気付かず、いや、見て見ぬ振りをしていたのかもしれない。 悠はどんな事があってもオレの側に居てくれる。 悠の笑顔はオレにだけ向けられている。 悠から別れを告げられる事はあり得ないと、傲慢にもオレは、当たり前のようにそう思って日々を過ごしていた。 悠が何を考え、何を思っていたかなんて考えもしなかったのは、 傲慢なオレの…罪だ――――…。
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