楓 side

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楓 side

「はあっ?!嘘だろっ?」 スマホの電源を入れ、着信を確認したら悠からのメッセージの添付された写真を観て、思わず青くなった。 ストーカーかよって思ってしまった。 以前付き合っていた女がそうだったから。 気を取り戻し、「悪いが急用が出来た」と彼女に言うと、かなりゴネられイラついた。 「ゴネるならもう会わない」と さっきまで笑顔だったオレは冷たく言い放し、丁度 来たタクシーに彼女を乗せた。 彼女の連絡先を削除しながら、オレは駐車場に停めていた車に乗り込み、自宅マンションに向かう間、言い訳を考えてた。 まだ大丈夫だと。 悠はまだオレの事が好きだから、最悪な結末はないと。 謝れば済む事だと。 その反面、最悪な事も想定しながら雪が降る中 運転をしていた。 良い言い訳が浮かばないまま、玄関を開け、緊張しながらリビングに向かう。 シャワーの音が聞こえて、ホッとしてソファーに座った。 ホッとしたのは悠がこの家に居たから。 最悪な想定の1つだったのが、悠がこの家に居ない事だった。 カチャッ…と、ドアが開き、 「おかえり、ご飯これから作るから待ってて」 ソファーに座り頭を抱えていたオレに向かって、いつものように、何事もなかったようにオレに言う。 その悠の言葉にビクッと身体を弾かせ驚きながら顔を上げて悠を見た。 悠は笑みを浮かべていた。 想定外だった。 罵声を浴びせられるか、詰(なじ)られるか、泣いているかと思っていたから。 悠は優しいから許してくれる。 だから素直に謝ろうと オレはソファーから立ち上り頭を深々と下げ、謝罪の言葉を口にした。 「悠…、悠 ごめんっ!」 オレを一瞥し、悠は無言でキッチンに行き、冷蔵庫からペットボトルを取り出し、その場でごくごくと飲んでいた。 リビングに戻り、頭を下げたままのオレと離れた所で立ち止まり、 そしてゆっくりと語りかけてきた。 「ねぇ、楓…。その謝罪は何に対して?休日出勤だと嘘をついた事?それとも、あの女性と手を繋いでデートしていた事?あぁ、アノ人、2週間前のホテルの女性と同じ人なの?」 薄笑いをする悠を見た。 オレは動揺し、目を見開き、息を飲んだ。 「――っ!な…んで、それを…」 「あの日、僕は楓に電話したんだよ?そうしたらさぁ、女の人が教えてくれたよ?今ホテルだって。楓は今 シャワーしてるって」 「――――っ!」 オレは全身の血がサーッと引いたような感覚に陥り、震えた。 「ねぇ、ホテルでシャワーまでして何してたの?」 悠は、声を荒げる事なく淡々と話を続ける。 「――顔色が悪いよ?楓」 「ごめん…なさい、悠…」 オレを徐々に追い詰めていく悠の言葉。 悠の顔を見る事なく、オレはその場で跪いた。
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