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楓 side
「電話の事その人から聞いてなかったから、楓は嘘を付いたんだよね?残業ついでに飲みに行って同僚の所に泊まったって。
ふふっ笑っちゃうよね?
そんな事しなくても良かったのに。
別れたいなら別れてと言ってくれたら良かったのに…」
「違う!別れたくない!好きなのは悠なんだ!あの子は、ただのセフレなんだ!ただ今日はあの子の誕生日だったから頼まれて付き合っただけなんだ!」
今まで悠は穏やかに、笑みまで浮かべて話をしていたのに、次の瞬間、声に怒気が孕んでいた。
「――2週間前、僕も頼んだ筈だよ?絶対に一緒に晩ごはんを食べようって…。それなのに帰って来なかった。忘れてたでしょう?あの日は僕たちの2年目の記念日だった……。僕の頼みは蔑ろで、ただのセフレの頼み事を訊くなんてね……。
楓にとって僕は、その程度の存在なんだね?良く解ったよ?」
「っごめん!悠、悪かった!許してくれっ!別れたくない!」
オレはいつの間にか泣いていて悠に懇願する。
悠は近付き、立ったまま無表情で見下ろしていた。
「ああ、もうひとつあった。僕からの電話、電源まで切ってたよね?さすがにあれにはショックだったよ?僕の電話そんなに邪魔だった?」
「違うっ!どうかしてたんだ。一時の感情で裏切る真似をして、悠を傷付けてしまった事、後悔してる。
言い訳ばかりで本当にごめん!好きなのは悠だけなんだ。本当なんだ。
相手は、性処理するだけの相手なんだ。もうしないから。だから、許してくれっ!
悠が好きなんだ。
悠にまた信じて貰えるように頑張るから。これからも一緒に居たいんだ」
「――そう、わかった…。僕も楓が好きだよ?これが、最後だよ?約束して?」
「ありがとう、悠」
しゃがみ込んだ悠と視線を合わせ、オレは許されたと安堵した。
悠を抱き締めた。
悠はされるがまま、そのまま受け入れてくれたと思った。
オレはもう2度と浮気をしないと悠に誓った。
必死で懇願した理由は―――…
クズ過ぎる理由は―――――…
悠を失ったら、このマンションの家賃を1人で払えない。車のローンもある。
女とホテルに行くにしても金がかかる。
それはもう止めるから良いが。
愛してるのは悠だけだ。
それは嘘ではない――――…
―― 楓 side END ――
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