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『楓、今日の夜は、一緒に家でご飯食べてよ?楓の好きな物用意するからさ』 『うん、予定ないからいいよ?楽しみにしてる』 『絶対だよ?』 『わかってるって』 いつもの人好きする優しい微笑みで、僕の頭を撫で、そう言ってくれた。 これが朝のやり取りだった。 そして、今 ―――… 僕は今日仕事が休みだから、朝、楓を見送ってから家事をこなし、早めに晩ごはんの下準備を終わらせ、ひと息ついていた。 『悪い、残業になりそう。なるべく早く帰るから』 『お疲れ様。わかった。仕事頑張って』 と、メッセージを返す。 時刻を見たら4時32分。 まだ時間はある。 彼を待つ間、ネットサーフィンをして時間を潰す。 ふと目にした言葉。 ――― 相殺(そうさい) ネットで何気に意味を調べた。 『差し引いて、互いに損得がないようにすること。帳消しにすること。また、長所・利点などが差し引かれてなくなること。』 ふーん…、そういう意味か…。 その時はそう思っただけで、気にも止めなかった言葉。 そろそろ晩ごはんの用意をしようとキッチンに立つ。 ふっと目が覚めた。 気が付いたらスマホ片手にソファでうたた寝をしていた。 スマホで時刻を見たら11時48分。 もうすぐ今日が終わる。 僕らの2年目の記念日だった。 楓は忘れたの―――? 明日なら意味がないんだよ? 今日は僕たちの2年目の記念日なのに忘れたの?楓…。
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