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ハッと気が付いたら、後の処理が済み、バスローブを着せて貰っていた後だった。
「目、覚めた?水飲むか?」
「……ん、ありがとう…」
声が掠れてる自分に驚いた。
キィさんは、ベッドヘッドの棚に置いてあったペットボトルの蓋を開けて、ストローを刺し入れてから僕に手渡してくれた。
「今日はこのまま一緒に泊まろう」
「あの、いいんですか?」
いつも泊まりなんかせず、終わったら帰っていたから…。
「身体、辛いだろう?これでも手加減したんだけど、大丈夫か?それに、ユウくんを1人にさせたくないし。ね?そうしよう」
「えっ…? あ…」
僕を抱きしめ、額にキスを1つし、腕の中の僕を覗き込むキィさんの目が優しくて、キィさんに頭を撫でられ癒された。
それなのに、急に緊張の糸が切れたかのように、何故か涙が溢れ出て止まらない。
「あれっ、なんで……」
「ユウくんは、今まで気を張ってたんだな。だからやっと 泣けたんだな。ここに来てずっと疲れた顔っていうか、泣きそうな顔してたんだ。
彼氏と別れてから泣いてなかったんだろう?
ユウくんは心がずっと傷ついてたんだよ。がんばったんだな。だから、泣きたい時は泣いていいんだ。それからゆっくり休んで。な?」
キィさんの優しい声が心に染みた。
「ありがとう、キィさん…」
涙を流し、鼻をすすりながらキィさんのバスローブに顔を埋める。
またそっと優しく抱き寄せられた。
僕の涙を拭う長い指も
僕を抱きしめるこの腕も
額にキスをする唇も
全部僕のものになればいいのにと、そんなことを泣きながら思った。
だってキィさんは、セフレなのに寄り添ってくれて、一時的だけど、僕を幸せな気持ちにさせてくれたから―――――…。
キィさんのトクトクと心臓の音が心地よくて、腕の中は安心出来る場所で、僕はいつの間にか眠りについた―――――…。
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