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「―――嘘つき…」 虚しくため息と共に溢れ落ちる言葉。 今日は早く帰って来ると言ったのに。 折角 彼の好きな料理を作ったのに。 ラップをかけて テーブルの上に置かれたままの料理を見て、また ため息が漏れるが、もしかして何かあったのかもと心配になり、楓に電話をした。 『――はい?』 電話に出たのは女性の声。 何故…どうして…ざわつく心 心臓の鼓動が早くなる 「あの…っ、それ 楓のスマホ…」 声が震えた。 その女性は僕が楓の友達だと思っているのだろう。 『あぁ、はい。そうです。楓くんのお友達?今ね、彼、シャワーを浴びているから、後でかけ直すように言いましょうか?』 電話の女性はおっとりとした口調の話し方。 胸がギュッと締め付けられる感覚になんとか耐えた。 「はぁ?シャワー?…いや、…いいです」 絞り出した声は、 情けないほど震えている。 『ああ、ここホテルだから。何してたかなんて恥ずかしいから、想像しないでね?ふふっ』 楓の浮気相手のその人は、嬉しそうに答えた。 「楓くんに急用じゃないのなら、切るわよ?じゃあね?」 「――――はい…」 と言って電話を切った。 その場で膝から先にガクンと床に落ちた。 頭をハンマーか何かで殴られたような衝撃を受けた。 やはり浮気してた! いつから? あっちが本命? 仮にも僕は恋人なのに―――っ! それなのに 男の僕では抱けないから? 僕には魅力がないから? 今までずっと好きだから、側に居られたらそれで十分だと言い聞かせていたのに! 僕たちは男同士だからと諦めていたのに! その女性の事が羨ましいと思った。 自分が浅ましいとも思った。 僕が女であれば良かったのにと、 ずっとそう思っていた。 女であれば楓と身も心も結ばれていたのにと。 本当は楓と心だけではなく、 自分がどれだけ 自分がどれほど 楓と体も繋がりたかったのかを再認識した。 頭の片隅で、いつも思っていた。 ノンケの楓は、いつかは女性の方に目が向いてしまうかもしれないと思っていた。 いつかは浮気をするだろうと思っていた。 今は悲しみと、悔しさと、虚しさだけしかない。 気が付いたら情けない程 涙が止まらないく、声を出して、泣いていた―――…
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