ナルシスト が あらわれた !

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そんなこんなで俺は今日も元気にナルシストをやっている。もう演技もマスターしちゃったよ。スラスラと自画自賛の文句が出てくんだわ。 「やっぱり今日も変わらず俺はかっこいいな。そう思うだろ?美津」 「ナルシスト…」 「うーん、美津に振ったのは間違いだったか。俺の顔を絶賛してくれる人居ないかなぁ」 「給料くれるならやるよ!」 「そういうのはお断りだよ。俺の美しさをちゃんと分かってくれる人じゃないと」 ひょっこりと出てきた守銭奴こと山西を一刀両断する。別に俺はそういうのは求めてないんだわ。いやそもそも顔を絶賛されることすら求めてないんだけど。 山西は俺たちと同クラス、2-Bの人間だ。このクラス分け、実は純粋な学力によるものではない。学力に加えてみんな大好き家柄と顔が追加されるのだ。この2-Bは学力があって家柄と顔どっちかがないかどっちも中途半端な奴らが大半である。俺は学力はある。だが家柄がゼロなのでここに配属されているのだ。みっちゃんも同じ。山西は顔も家柄も中途半端だからここに配属されている。いや別に悪口ではないからね。 「そういえば今日転校生が入ってくるらしいよ!隣のクラスだって!」 「ふうん、転校生か。まあ俺は俺と美津にしか興味ないからいいけど。」 我ながらホモちっくなことを言っているのは承知だ。だが、ここでホモっておくと後々楽だ。みっちゃんを引き合いに出せばみんな大体引き下がってくれるので。いやー、周りがメンヘラヤンデレ化しても爆笑して隣にいてくれた幼馴染万歳。俺中学で周りから人狂わせのホストとか言われてたからね。確かにホストっぽい言動(外行き)してたかもしれないけど。確かにメンヘラいっぱい作ってたかもしれないけど! 「理事長の甥?」 みっちゃんの声で現実に引き戻される。 「え、美津くんテレパシー?マジで理事長の甥なんだって」 腐男子特有の能力を使ったのだろう。確かこういうのはテンプレらしい。知らない間にホモ学園にテンプレートができていたが、十中八九碌でもないやつな気がする。例えば転校生がとんでもなくSでみんなの尻を掘り始めるとか、実は女装してて逆ハーレムモノが始まるとか。勘弁しろよお前。俺は逆ハーもハーレムも地雷なんだ。感動できる一途な恋愛が欲しい。あ、でもホモはご勘弁。 そんな俺の切実な願いも校舎に着いた瞬間に打ち砕かれる。エントランスからアベックがうじゃうじゃ居る。あれ?アベックって死語だっけ。まあいいや、兎にも角にもそこらじゅうで有象無象がベッタベッタしている。なんで尻を触ってんだ自重しろ。Dキスをかますんじゃねえ俺の朝食がリバースする前に濃厚接触を今すぐやめろ。三密を守れ、コロナが流行り出した頃みたいに。全員病院送りになーぁれ。七夕の願いこれで確定だな。 「わぁお相変わらずすごい」 これには守銭奴の山西もコメントせざるを得ないようだ。みっちゃんが小さく頷く。 「TPO」 「まあ俺の前では全て霞むけどね」 すかさずナルシスト発言を挟んでいく。流石俺、将来は役者かな。てかこんなところで立ち止まっていてもどうにもならないので、上履きを履いてさっさと退散。ちゃんと下駄箱に鍵を掛けておく。こうでもしないと靴が盗まれるんじゃあ。どうなってるの治安、お母さんは心配だわ。みっちゃんは相変わらず何も言わない。まだ人が多いから緊張しているらしい、眉尻が下がっている。身長は俺と同じくらいなのに、どことなく小動物味があるな。 「大丈夫だよ、みっちゃん。ほら、早く行こう」 手を取ってエントランスを抜ければ、人は大分少なかった。やっぱりアベックは下駄箱でダラダラとコミュニケーション(笑)取ってるんだな。だからこんなに校舎内は空いてるんだろうから、一応感謝でもしておきますか。スゥー、ありがとう二度と視界に入ってこないでね。 「き、緊張したぁ…ホモ観察できたのは良かったけど、人が多いとダメだなぁ」 「確かにお前と俺に視線がバシバシ突き刺さってたから居心地悪いのも無理はないよな」 「え、気づかなかったんだけど…はぁ、もっと無理になったかもしれない」 「悪化させちまったか」 「別に見られてること自覚してないままよりは何十倍もいいんだけど。ホモ学園って自分が狙われてる時もあるから気が抜けないよなぁ」 「そういえばお前ファンクラブ出来そうになってたわ」 「嘘でしょ聞いてないなんで俺には情報来てないの?ほうれん草はちゃんと食べなさい…あれ?なんか違う…まあいいや教室に向かおう」「切り替えはっや」 無人の廊下を二人で歩く。こうも人が居ないとまるで異世界に迷い込んだかのような心地になる。ちょっと早く来すぎたかもしれないな。さて、移動中に少し学園内について説明しておこう(メタ)。この校舎は四階建て。一番下が一年生の教室があるとこ。全部で4クラスだったかな?ABCDだったはず。因みにDはガチの不良クラスなので近寄らない方がいい。俺からのひとくちアドバイスだよ! あと職員室とか生徒指導室とかもこの階にある。2階は二年生の教室で、三階が三年生の教室。四階とかに部室があって、それとは別に五階に生徒会室と風紀室が。なんでこの二つだけ特別待遇。いや別に帰宅部の俺に異論はないけど。図書室と体育館、講堂とかは本校舎から廊下で繋がっている。 てかこの学校でっっっっっかいんだわ。マジで。空き教室とか有り余るほどあるし。なんなんだよ。あ、他にもコンピューター室とか理科室とか美術室とかあるけど割愛。語り出したら夜空に星が浮かんで陽キャがレッツパーリナイし終わる位まで止まらないくらいには広いんだ、この校舎。マジで陽キャのパーリナイは長いぞー… 「ふぅ、やっと着いた」 二年の校舎は二階なのでそこまで登らなければならないが、この学校なんとエレベーターがある。まあ俺たちは二階だから普通に階段で行くけどさ。どんだけセレブなんだこの学校は。まああのユメカワ(笑)たちも「〇〇家に逆らえると思ってるの!?」だとか「この庶民がっ!」だとか言ってたしな。てか発言が悪役令嬢では?なろうとかでホモカップルのムカつく顔より見たことあるぞこのセリフ。 スパァンとみっちゃんがドアを開ければ、クラスメイトが気づいて寄ってきた。
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