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ベルサイユの赤い雨
ベルサイユ宮殿は、1682年に、フランス王ルイ14世によって建築された宮殿だった。
太陽王と呼ばれた時代の意匠を今も残す、バロック建築の荘厳な宮殿でもあった。
鏡の間へと至る小部屋には、黒地に銀糸が映えるウェディングドレスを着た毒蛇妊婦が、最愛の男を待っていた。
扉が、勢いよく開いた。
「あああ!赤い太陽仮面に燃えて、すっくと立った俺が来ーたーよーう!とりあえず、可愛い蛇ママちゃんの愛とコーヒーは全部俺のもんな?!」
壁1枚隣の部屋にいた勘解由小路家の長女、7歳の碧が、サン・シモンの「回想録」を、パタンと閉じて双子の弟に言った。
「太陽王みたいなパパが現れた。これから、劇場が始まるな」
うん。花のように美しいドレスを着た長男の流紫降が応えた。
「これで、何回目の式なんだろう。もうそろそろ、ブライドメイドはやりたくないよ。そろそろ代わってくれない?碧ちゃん」
ドレスのサイズ一緒だし。凄く可愛いと思う。だって僕の妹だし。
「天然美少女めいた弟見てニタニタしたい姉の気持ちを慮れ。乙女には乙女の萌えというものがある」
どっちもお互いを妹、弟と言う、双子の厄介さがあった。
「ところで隣の部屋じゃあ、パパが散々フランス王めいたことをズラズラ言ってるな?ありゃあ14世の爺さんアンリ4世の逸話だな?ガイヤールとパイヤールは」
「ルイ15世の言葉も出てきたよ。全てはおっぱいから始まるって言うのも。父さんホントに母さんのおっぱい大好きだもんね。でもいいの?ほぼ勝手についてきちゃってるよ?僕達」
「見越してお前をブライドメイドにしてるパパもどっこいだな。さて、そろそろママのお腹から弟が出てくるな?流紫降どう思う?」
「嬉しいに決まってるじゃないか。僕が生まれてから、ずっとずっと待ってたんだよ?うちは女性比率が高いから、僕の意見て基本省みられないし」
何を言ってるんだ?うちの絶対君主くんは。
お前に命令されたら、多分私だって「はい」って言うぞ?
パパの「アカシックレコード改変事件」覚えてないのかお前は。たった2年前だぞ。
「私としてはあれだな。莉里の単を打ち壊し損ねているのがな」
だから、莉里ちゃんの単て、それ父さんだよ?だから。
「そういえば、莉里ちゃんは」
「ああ。何か、トキとニューヨークに行ってたみたいだぞ?パパが家に帰って、莉里に甘いトキを排除しようとしたんだが、一手遅かった。まあ、女には、女の世界があるからなあ」
そうだろう流紫降。って碧ちゃんが言った。
僕に言われても。僕は凄い納得いかなかった。
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