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調べ物を済ませ、駅へ戻る。どこもかしこも混み合っていた。人通りの少い路を選び、角を曲ろうとした時だった。
カーブミラーを見て、はたと立ち止まる。自分の姿が映っていない。
目を落して、愛理は小さな悲鳴をあげた。体が消えている。彼女は服や鞄もろとも、透明になってしまったのだ。
急いで引き返す。太陽はこんなに明るいのに、足元に影は落ちていない。
途中、一人の男と擦れ違った。なぜか右手を胸元に隠している。フードを深く被り、恨むような目で辺りを睨んでいた。愛理は少し怖くなった。だが、彼にも愛理の姿が見えないらしく、そのまま通り過ぎてしまった。
息を弾ませながら、図書館の前できょろきょろする。あの少年は、もうどこにもいなかった。
(どこに行っちゃったの? 元に戻してよ!)
愛理は呼びかけたが、声が全く響かない。体の周りに見えない壁ができていて、光も音も遮ってしまうのだ。
少年から貰った、青い指輪の作用に違いなかった。自分で外そうとしたが、ぴったりとはまっている。指に貼り付いているみたいだった。愛理はどうすることもできなくて、へなへなと玄関前の階段に坐り込んでしまった。
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