第七話 シー・ライザ

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 ヒサクも応戦しようとするが、動きが速すぎて避けるのが精一杯。シーライザの短刀が空を斬る音を立てるたびに、私は安堵する。  私も、この劇薬をなんとか活用したいけれど、付け入る隙がない。そもそも、ヒイロはある程度護身術を身につけていたけど、こちらは全くの素人なのだ。あの二人の間に入っていくなど、到底無理だ。  ファルシアも、隣でハラハラしながら見ている。  ヒサクは、すでに肩で息をしていた。シーライザは、呼吸の乱れひとつない。実力の差は、素人の私が見ても歴然だった。息を整えようと距離を取ろうとするが、シーライザはそれをさせない。だめだ、やっぱりヒサクはやられてしまう……。  いっそのこと、この劇薬をシーライザに投げつけようか?  いや、きっと避けられるし、当たったとしても服の上からだ。  それだと、効果が薄い。  シーライザのターゲットを、私に変えれば……。  私は、シーライザに向かって叫ぼうと、体に力を込めた。  その時── 「ダメっ! ヒイロ!!」  ファルシアに感付かれ、止められた。  その声は、シーライザの耳にも入ったらしく、彼は一瞬こちらに気を取られた。その隙を、ヒサクは見逃さなかったようだ。ヒサクの一撃が入る。  しかし、致命傷とまではいかず、シーライザはすぐに体勢を立て直す。 「ヒイロっ、今、何をしようとし──」  ファルシアは言いかけたが、次の瞬間、ヒサクとシーライザに向かって走り出した。  しまった、この展開は……! 「ダメェェぇぇぇっ!!」  ファルシアは、叫びながら二人の間に入っていった。  シーライザの短刀は、かろうじて軌道を逸れ、ファルシアの腕を斬った。  その瞬間は、まるでスローモーションのように感じられた。 「……メ、ダメだよ、ライザ……。これ以上は」  ファルシアは、ヒサクを背にかばように、シーライザに向き直った。  ただただ、純粋な目を向けて、彼に懇願した。  ライザ。  それは、シーライザのミドルネーム。  彼と親しい者でなければ口にすることのない名前だった。  そうだ、彼女はずっと願っていた。ヒサクとシーライザ、二人を救うことを。 「ごめんね……。あの時ライザじゃないって、言えなくて……。ごめんね……」 「……ファルシア?」  何が起こったのかわからないヒサクは、ファルシアに驚きの目を見せた。
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