ⅤS格闘家・2ラウンド④

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ⅤS格闘家・2ラウンド④

前世は五股した俺だ。 そして、セックスについては、人生の暇つぶしをするのに最適な手段との認識。 暇つぶしが目的だったから、恋愛はしなかったし、結婚をするつもりもなかった。 不義理をすることにも抵抗感はなく、良心が咎めることもない。 が、前に不倫した男を空のかなたにブッとばしていた格闘家は真逆に、貞操観念が高く潔癖なのではないか。 勇者とも肉体関係をもつ俺を、それでも触りたいのか? あらためて問われて、迷いや葛藤がないでもないのだろう。 こめかみを引きつらせつつ、目を瞑って一息つく。 引きあがるかと思いきや、瞼を上げると、熱っぽさを隠さずに見つめて、俺の頬を撫でた。 一歩踏みだしたのに、一歩退いて、壁にもたれる。 火照った肌の蒸した匂いが、むあっと迫って。 頬を熱くして顔を伏せれば、屈みこんで顎から鼻の下まで舐められた。 「う」と顎を反らして、壁に頭をごつん。 つい唇を噛んだのを、どうこうせず、舐めたり、食んだり、口づけしたり。 頬を撫でていた手で耳をもみもみ、もう片方の手で腰をなでなで。 絶え間ないリップ音と水音、手のイタズラに負けて「はん、あ・・・」と吐息したら、舌をねじこまれた。 格闘家とは初チュー。 転生して、男に抱かれるようになり、初めて、まともに口づけした相手でもある。 勇者のほうが先だったが、薬によって強制発情され、意識はなく、操られていたようなものだから、ノーカンだろう。 暴走するまま、がっついていた勇者に比べて、格闘家はムードたっぷりねっとりにチュッチュ、ちゅくちゅく。 首を指でくすぐったり、背中を撫であげられるたび、口づけの合間に「はあ、や、やあ、あ・・・」と猫が甘えるように鳴いてしまう。 陶酔するような、恥ずかしいような、もどかしいようなで格闘家の固い太ももに股間を押しつけ、すりすり。 俺のはしたない行為に気づいた格闘家は、獣じみて唸ると、荒荒しく口づけしだし、手つきも荒っぽく。 もみくちゃに尻を揉みしだきながら、シャツの裾から入れた手で胸をまさぐり、突起を押しつぶして揺すりまくり。 一方で股間を当てている太ももは静止。 口内を舌でかき回され、尻と胸を愛撫されて「んあ、く、あ、ずる・・・」と喘ぎ交じりにクレームをしつつ、格闘家の固い太ももを足で挟んで、腰をくねらせる。 唇が放れた一瞬「ふ」と笑われたような。 いつも馬鹿正直に真っ向勝負な格闘家らしくなく、わざと、じらして辱めるような真似をして、まんまと俺が乱れるのに、ほくそ笑むなんて。 「むっつり助平のイジワル!」と内心、文句を垂れながらも、格闘家の笑いに背筋がぞくぞく、腰がむずむず。 勇者が脳裏にちらつくも、それも燃料のように、俺らを高ぶらせているらしい。 なんやかんや盛りあがってしまい、試合のあとも引きずる格闘家の激情にも当てられて、あっという間にイきそうになった。 そのとき。 「お休み中のところ、申し訳ありません。 支配人が部屋まできてほしいとのことです」 ノックがされた直後、固まった俺らに、呼びかけが。 とたんに肝が冷えたが、相手はドアを開けてこず「分かった」と格闘家が返事したこともあり、すぐに去っていった。 つめていた息を吐き、胸を撫でおろせば、同じように、ほっと息を吐いた格闘家の額に額をつける。 TPO糞くらえに、おっぱじめようとした、めでたい色ボケぶりに、二人して苦笑。 触れるだけの口づけをして、笑いかけた格闘家は「すぐ、もどってくるから」とちらりと下を。 俺が半端な状態なのに、にやりとしたようだったから「はやく行けよ」と顔をしかめて、胸を叩く。 小さく噴きだし、肩を震わせながら、部屋からでていくのを見送った。 格闘家がいなくなると、部屋はひどく閑寂としたもの。 あたりに人気がなさそうで、物音もせず、さっきまで、花火連発するように大フィーバーしていたのが、もう客も関係者も帰ったというのか。 耳が遠くなるような静寂に、寒気を覚えて、股間もしゅん。 腕を抱きつつ、椅子に座った、その直後。 突然、なんの前触れもなく、ドアが開け放たれた。 ドアからなにかが跳びだしてきたようだが、はっきりと目にする間もなく意識喪失。
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