VS勇者・2ラウンド③

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VS勇者・2ラウンド③

ちょうど、テントが予備を含めて二つあったから、もちろん男女別で使用。 怪我をした黒魔導師と遭遇してから、勇者との板挟みになり、神経をすり減らせたとなれば、そりゃあ、疲れはてて、毛布をかぶったとたん意識消失。 夢も見ないほど熟睡したのが、まどろみとはちがう、快さがじわじわと体に広まって「はあ、ん・・・!」と悩ましげに鳴いたところで、目を覚ました。 寝ぼけながらも、鼓動を早めて息を切らし「は、ああ、あ、く、んん・・・・」と腰をびくびく。 股が濡れているものを、おねしょではない。 ・・・はず。 いや、こんなにおねしょが官能的であってたまるか! じゃあ、一物が湿っているのは・・・。 「まさか!」と重い瞼を跳ねあげると、喘ぎを飲みこみ「こら!」とすこし起き上がって、股間に手をやった。 わしづかみにしたのは、股間に顔を埋める夜這い糞勇者の頭だ。 俺が起きたのを知りながら、尚もがっついて、唾液と先走りで股間をぬちぬちぐちゃぐちゃ。 しきりに両手で揉みこみ、舐めまわすものだから「ば、かあ、ああ!やめ・・・ろお、あ、あん!」とヨがるまま、身を任せてしまいそう。 「くそ、負けるな俺!」と舌を噛んで、目に涙をにじませながら「やめろお!」と両手で頭をばしばし。 さすがに見あげたとはいえ、薬でもキメているような目つきをして、おもむろに顔を寄せてきて、そのまま口づけを。 「おおおおおい! 黒魔導師がそばにいるんだから、世の羨望の的の勇者たるもの弁えないでそうする! 低能ど助平お下劣野郎みたいに、ところかまわず盛るなボケ! って俺は叱りたいんだよ!」 心の絶叫をあげるも、胸と股間をまさぐられながら、深く口づけされては「あ、や、ふ、ああ・・・」と涎と喘ぎをたれ流すしか。 にしたって、モラルの欠如を正そうとしても、意味はないだろう。 もともと、勇者は常識やルールを重んじる人だから、馬の耳に念仏だ。 なのに「モラルなんて糞くらえだ!ヒャッハー!」と暴走しているのが謎。 そう、白魔導師とお似合いカップルのくせに、仲間の一人の俺と浮気するのにしろ、頭がいかれたものだが、一応、こそこそはするのだ。 白魔導師と格闘家にはもちろん、ほかの人の目や耳につかないような場所を選び、タイミングも見計らうし。 念には念をおし、人や魔物の接近を知らせるしかけを設置するなど、万全を期してフェラに耽るわけ。 たしかに今は、仲間に見つかる危険はないが、勇者を狙う肉食女がそばにいては、もっと訳がわるいだろう。 ばれたら、勇者に相手にされなかった腹いせに、スキャンダルを吹聴するかも。 そんな危機的状況にあるのを、基本、いい子な勇者は百も承知のはず。 なにを、やけくそになって、俺を道連れに身の破滅を招こうとしているのか。 口づけにしたって、いつもしないのに。 格闘家にも云えることで、まだ、上下、どちらの口にも手だししていない。 俺がおねだりするように、しむけてくるあたり、あくまで許可を得てからと考えているらしい。 はじめは不意打ちを食らわし、それから強引に体を求めておいて、両想いのセックスをしたいというのか。 まあ、一生、果たせないだろう夢だが。 とくに俺と勇者が結ばれることはあるまい。 だって、五股された前世の恋人と、同じような惨めな立場になるくらいなら、死んだほうがまし!との意地は揺らがないから。 「ああ、浮気されるのは、こんなにツラかったのか」「オレハナンテヒドイコトヲ」と後悔したり懺悔してたまるかっつーの。 そうやって俺があまりに意固地だから、しびれを切らして強行突破をはかってきたのか。 だからって、どうして今のタイミングよ?
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