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早く家に帰りたいというウキウキ気分が一気に冷めた。 総務部から聞こえる会話が鮮明にリピートされて、私の心を蝕んでいく。 …忘れたフリをしていたが、そう簡単にはいかないようだ。 あきらくんが部屋で待っている。 たしかにそれは嬉しいことで、喜んでいたのは嘘じゃない。 …でも、どこかで無理して空元気を装っていた。 自分の気持ちを誤魔化そうとしていたが、やはりどうしても私とたかしさんの不倫という罪が頭から離れやしない… 不倫なんて、人のものに手を出した愚行。 テレビドラマや漫画の世界にはよくある設定。 実際してる人も勿論いる。 でも、世間的には最低な行為だ。 どんなに愛という名で着飾っても、所詮は不倫… あきらくんが本当はこんな愚かなことをしていた私だと知ったらどう思うだろう…? まだ、純粋無垢な高校生…きっと軽蔑するに違いない。 でも、黙っているよりはいっそのこと話した方があきらくんのためだ。 大切な青春の時間に、こんなおばさんと密会なんて無駄な時間を過ごして欲しくはない… …そうだ。 もっと早くあきらくんにそのことを話していれば、こんな不思議な関係を続ける必要もないし、彼の前世の愛も冷めてくれるかもしれない。 電車を降りて駅を出た私は重い足取りで帰路につく。 会社を出た直後とは正反対である。 …何で不倫のことを今まであきらくんに語らなかったのだろう?
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