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頭をぶんぶんと横に振る。 …ううん、今日は話さないと決めたのだから、考えちゃダメよのりこ。 普通を装いなさい…いつものようにあきらくんに接するのよ? と自分にしっかりと言い聞かせてから、鍵を開けて玄関のドアを開けた。 「ただいま」 心の中から迷いを消して、声を出す。 すぐに奥から足音が聞こえてくる。 それと同時に美味しそうな匂いも漂ってきた。 「おかえりなさい。今日も一日お疲れ様です」 あきらくんが玄関に現れて、優しくそう言った。 その優しさが思わずグッとくる。 …今日は本当に疲れたから、あきらくんの言葉は心に沁みた。 私は「ありがと」と返事をして、靴を脱いだ。 そして、中へと上がりあきらくんの前に立つ。 すると、あきらくんがこっちをじっーと見つめていた。 「…どうかした?」 思わず訊ねる。 「何かありました?今日ののりこさんは何だかいつもより疲れているように感じる」 あきらくんの言葉に目を見開いた。 そして、目頭が熱くなる。 堪えていた感情が心の底から込み上げてきたのだ。 私はあきらくんから顔を背け、顔を手で覆った。 …ダメだ。 我慢していた感情が溢れてきて、涙が止まらない。 すると、あきらくんが後ろから優しく抱きしめてきた。 慌てて、あきらくんを引き離そうとしたが、すぐにやめる。 私より背が高くて、簡単に私は抱きしめられた。 悔しいくらいに安心感を覚えてしまう。 それが更に涙を促進させる。
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